【英語コーチ執筆】効率的に伸ばすリスニングの勉強法
リスニングを勉強しようと思ったとき「あれ、リスニングってどうやって勉強したら良いんだ?」と思ったことはないでしょうか?
ネットで調べても、すぐに実行に移せるように書かれた記事は多くありません。
この記事では、現役の英語コーチの私がリスニングの勉強法について、第二言語習得理論に基づいて解説していきます。
この記事では以下の疑問が解決できます。
・英語のリスニングが聞き取れない理由は?
・英語のリスニングを効果的に勉強するポイント
・英語のリスニングの具体的な学習方法
・英語のリスニングの教材の選び方
・英語のリスニングの間違った学習方法
この記事を読めばすぐにリスニングの勉強に入れます!
英語のリスニングが聞き取れない理由は?
英語のリスニング力を効率的に伸ばすためには、聞き取れない原因を特定することが必要です。
残念ながら、万人の特効薬となるようなリスニングの学習方法は存在しません。
聞こえない原因を特定し、その課題を解決するトレーニングを計画・実行していくことが唯一の「効率の良いリスニング学習」であると言えます。
「リスニングができない」と一口に言っても、その原因は多種多様です。
以下に、第二言語習得理論をもとにリスニングが聞こえなくなる原因をリストアップしましたので、自分に当てはまると思うものを特定しましょう。
- 集中できていない
- 語彙が不足している
- 英文法を理解していない
- 音素を理解していない
- 音声変化を理解していない
- 一言一句聞き取ろうとしている
- 長い英文を聴くのに慣れていない
- 音の聞き取りに集中しすぎている
- 日本語の語順に直して理解している
どれか一つ、ではなく複数の原因があるはずなので自分に当てはまる原因を複数確認しましょう!
①集中できていない
リスニングの時に、しっかりと音と意味を取ることに集中できていないことはないでしょうか?
英語のリスニングで「集中できていない」と感じるときのほとんどが、実は単なる実力不足であるということは以下の記事で解説していますが、一部本当に環境的な要因でリスニングに集中できていないこともあります。
環境的に周りがうるさかったり、普段と違う環境で聞き取れない場合は
- 環境を整える
- 普段から本番に近い環境でリスニングしておく
といったことが有効です。
②語彙が不足している
リスニングのスクリプトを読んで、意味がパッと出てこない英単語が多い場合、教材に対して語彙力が不足していると言えます。
語彙力とは知っている単語の量です。
英文のうち、2%の英単語の意味が分からない場合、その英文の意味を正確に理解するのは難しくなります。
例えば、300語のスクリプト(リスニングの原稿)であれば、6つ知らない単語があるだけで一気にリスニングの難易度が上がります。
自分の使っている教材に2%以上分からない単語が含まれている場合、自分の語彙力が不足しているということを自覚しましょう。
③英文法を理解していない
リスニングのスクリプトを読んで「単語の意味は分かるけど、読むのに時間がかかる」という場合、英文法が運用できていない事が多いです。
リスニングといえど、英文の意味を解釈するプロセスはリーディングと同じです。
以下の図は、リスニングのときの脳内での処理を第二言語習得理論をもとに図式化したものです。
まず聞こえてきた音は「音声知覚」という音を処理するプロセスを経て、「意味理解」のプロセスに移行します。
この意味理解のプロセスでは、脳内のデータベースにある単語の意味や文法知識をフル活用して英文の意味を理解していきます。
このとき、英文法の知識が不足していたり、リスニングのスピードで文法知識を運用できていなかったりすると、意味理解がスタックしてしまいます。
こういった場合は英文法を勉強し直して、まずは英文法を運用したリーディングの練習をするといいです。
④音素を理解していない
上の図における「音声知覚」は聞こえてきた英語の音を処理するプロセスです。
この際にはデータベース内の「音素」と「音声変化」という2つの英語の音声に関する知識を参照します。
音素とは/g/, /ʧ/, /ʤ/のような音の最小単位のことです。
日本で英語教育を受けている方だと、意外と「発音記号が読めない」という方が多いですが、それはアルファベットを読めないでリーディングをしようとしているのと同じです。
集中して取り組めば数は多くないのですぐ終わります。
例えば以下の語群には、日本語では同じ「ア」に分類されるが、英語では区別される音素が含まれています。
hat/hæt/…帽子
hot/hɑ́t/…暑い
hut/hʌ́t/…小屋
これらの母音を日本語読みで区別せずに読んでいると、英語圏の人達は「防止のこと?暑いのかな?それとも小屋のこと?」と何を言っているかが分からなくなってしまいます。
反対にリスニングの際にも、同じく音源がどの単語を指しているかが分からなくなってしまいます。
自分が発音出来ない音は聞き取れませんから、まずはここを勉強しましょう。
⑤音声変化を理解していない
音声変化とは、an umbrellaが繋げて読まれることで「アン アンブレラ」から「アナンブレラ」と読み方が変化する、といった発音上のルールです。
英語が早く読まれれば読まれるほど聞き取りづらくなるのは、この音声変化が原因です。
音声変化はいつでも100%適用されるわけではありませんが、スピーカーがナチュラルなスピードで話そうとするほど、登場頻度が多くなります。
音声変化には、以下の5つの種類があります。
- 連結
- 同化
- ら行化
- 脱落
- 弱形
この5つは個別に適用されるだけでなく、複数の音声変化のルールが1箇所で組み合わされて再現されることも多いです。
そして、まさに複数の音声変化が集中する箇所こそ、リスニングで学習者が聞き取れないポイントとピッタリと重なります。
例えば以下のようなケースです。
wrap it all around him
→音声変化が重なると「ラッピローララウンディム」と読まれます。
→「ラップ イット オール アラウンド ヒム」とは読まれません。
字面からだと「ラップ イット オール アラウンド ヒム」と読まれると考えますが、実際には音声変化が起きて「ラッピローララウンディム」と読まれます。
これを学校教育だと、「慣れていないだけだ!何度も聞けば聞こえるようになる!」とされるわけです。
音声変化はいわば、リスニングにおける「英音法」といもいえる基礎知識で、これなしでは正確なリスニングの復習が出来ません。
リスニングの復習の際には、聞こえなかった箇所の音声変化を分析して、何度も口に出して滑らかに発音できるようになるまで練習することで徐々に音声変化が自動で聞き取れるようになります。
「本当に音声変化に慣れるだけで、聞き取れるようになるの?」とイメージが湧きづらいかも知れませんね。
しかし、皆さんはすでに一部の音声変化には慣れ親しんで、自動的に正確に音声知覚出来ているのです。
例えば「ディジュー」という英語が聞こえてきたら、自動的に「Did youだな」と認識出来ませんか?
これは音声変化の1つである「同化」というルールが適用されているのですが、これはなぜか学校教育でも「ディド ユー以外に、ディジューと読まれる」と教えられるため、聞き取れるようになっているのです。
⑥一言一句聞き取ろうとしている
木を見て森を見ず、という状態はリスニングにおいて、特に初学の方に見られる悩みです。
英文の中で一語聞き取れなかったときに、「あれ?今なんていった?あーでもない。こーでもない。。。」と考えているうちに思考停止して、その後の英文に集中して耳を傾けることが出来ません。
リーディングと違って、リスニングでは同じ箇所を止まって何度も聞き返すことが出来ないため、一言一句を聞き取ろうとするとどこかで聞き取れない単語が登場した時点で「あ〜、聞き逃してしまった…」と集中力が切れてしまいます。
第二言語習得者として、100%すべての英単語が聞き取れるということはめったにありません。
98%くらいの英単語から、全体の意味をなるべく正しく理解するというのが現実的でしょう。
そもそも「すべてを聞き取らなくてもいい」と肩の力を抜けば全体の意味への意識が芽生えてくることでしょう。
⑦長い英文を聴くのに慣れていない
短い英文なら聞き取れるのに、長い英文になると途中から集中力が切れてしまう場合、長い時間英文を聞き取る練習が不足していると考えられます。
私自身、初めて4分を超える長さの音源を通しで聞いたときには、途中で集中力が切れてしまったことがあります。
これくらいの長さの音源というのは、資格試験などでは練習しない長さであるため、それまでは聞いたことがありませんでした。
ただでさえ、自分の容量ギリギリの英文の速さ・内容の音源を4分間集中して聞くのはなかなか体力がいるものです。
⑧音の聞き取りに集中しすぎている
脳のワーキングメモリには一定の限界があります。
再掲ですが、リスニング時に脳は音声知覚→意味理解というプロセスを踏んで聞こえてくる英文の音・意味を取ります。
このとき、音声知覚にメモリを使いすぎると意味理解が疎かになり、意味理解にメモリを使いすぎると音声知覚で追いつけなくなるという「あちらを立てればこちらが立たず」というトレードオフの関係が生まれます。
「英文を聞いた後、意味が頭に残りません」という場合も、実は音声知覚にメモリを取られすぎているだけで、聞き取りの練習さえすればすんなり意味は取れるようになる、というのはよくあることです。
⑨日本語の語順に直して理解している
リーディングの際に、きれいな訳を作って読む癖がある人はリスニングのときに流れてくる英文のスピードについていけず、意味理解が追いついていない可能性があります。
意味理解が追いつかず、音はなんとなく聞き取れているつもりでも、聞き終わった後に内容が頭に残っていない、という経験はないでしょうか。
この場合は日本語の語順に直して理解しようとしているうちに、次の英文が流れてきてしまい意味処理が追いついていないことが原因です。
リスニングの際には、聞こえてきた順に英語の語順のまま意味を理解していくことが必須です。
このときに英文法の知識や語彙が欠けていると聞き取りが一気に難しくなります。
The earthquake caused people to stock up on bottled water.
→cause peopleが聞こえた時点で「cause O to do」の形を予測
→「地震のせいで、人は〇〇するんだな」とこの時点で解釈を完結させる
→peopleとto stock up on bottled waterの間にSV関係を見出しているため、一発で聞き取れる
上の例は実際に英文法の知識を活用して、意味を前から取っていく際の脳内の働きのイメージです。
これをすべて聞き終えた後、「えーと、主語は…で…」などと考えていては、リスニングのスピードに着いていけません。
英語のリスニングを効果的に勉強するポイント
リスニングの勉強は、学習プランの策定と日々の取り組み方によって、通常よりもかなり短い期間で実力を伸ばすことが出来ます。
そのために知っておくべきポイントを以下にまとめました。
- 発音の勉強を先に行う
- 同じ教材を繰り返し聴く
- スクリプトのある教材で練習する
- 定期的にリスニングのテストを受ける
- スラッシュ・リーディングを取り入れる
- 自分の弱点に効くトレーニングに取り組む
勉強を始める前の時点で成長の角度が決まります!
①発音の勉強を先に行う
もしすでに紹介した「音素」「音声変化」について知らない、もしくはぼんやりとした知識しかないという場合は、発音の勉強を真っ先に行うことをおすすめします。
この2つは音声知覚において絶対的に必要な知識でありながら、実際には知らない学習者が多いです。
学習量も少なく、「音素」「音声変化」合わせて1ヶ月もあれば基礎は習得できる程度です。
非常にコスパが良いので、まずはこの2つをしっかり習得することでその後のリスニング学習を加速できます。
②同じ教材を繰り返し聴く
リスニングではスクリプト(原稿)と照らし合わせながら、聞き取れなかった箇所を何度も聞き、発音することで徐々に音声が知覚できるようになります。
イメージとしては、リーディングの復習で辞書を引きながら、文法書を確認しながら正確に意味を取ることで徐々にレベルあアップした英文を読めるようになっていく感じです。
リスニングの復習というと、学生時代に勉強の仕方を教わっていないこともあってなんとなくスクリプトを確認して終わり、という感じになりがちです。
これでは音声知覚の復習をしていないことになりますから、非常に勿体ないです。
復習の流れとしては以下の流れで行うのがおすすめです。
スクリプトを見ずに、全体の意味をつかめるように聞いていく。
細かく、音や意味などを聞き取ろうとせずに全体として「こんな話をしている」というのが分かればOK。
始めた聞いた時点で7割くらい意味が分かるものが教材のレベル的にベスト。
それ以上聞き取れない場合は、教材が難しすぎるので、レベルを落としましょう。(リスニングはリーディングに比べて、練習する教材のレベルは思ったよりも簡単なものでOK。)
3回程度聴き「この辺が聞き取りづらいな」というところを大雑把にでも把握しておく。
スクリプトを見ずに、聞き取れないところを何度も聞いて弱点を洗い出す。
ステップ1で大雑把に捉えた、弱点の部分を5回は聞いてみましょう。
5回聞いても聞き取れない箇所は、それ以上聞いても変わらないのでほどほどに。
ここで初めてスクリプトを読んで、わからない単語は調べて意味を取る。
Step2で分かった弱点を音声変化をもとに分析する。
音声変化の分析の具体例
an umbrellaが聞き取れなかった
→an umbrellaでは「連結」が起きて、「アナンブレラ」と読まれると分析する
→実際の音源を聞いて「アナンブレラ」と言っていることを確認する。
→合っていればOK。違っていれば、あらためて分析出来ていない箇所を検討する。
まずはスクリプトありで、意味を理解しながら聞けるようになる。
最終的にはスクリプト無しで意味を理解しながら聞けるようになるまで聞く。
③スクリプトのある教材で練習する
既述の通り、リスニング上達のポイントは復習をしっかりすることです。
聞きっぱなしでは効率が悪いです。
すでに紹介した復習方法でも、スクリプトがないと復習が出来ないことが分かります。
必ず音源のスクリプトがついている教材を選びましょう。
④定期的にリスニングのテストを受ける
リスニングの力が正しく付いているかどうかを判断するために、定期的にリスニングのテストを受けることをおすすめします。
勉強し始めは誰でもやる気に溢れていますが、ただただトレーニングをこなすだけでは次第にモチベーションも落ちてくることでしょう。
例えば、筋トレをはじめてから6ヶ月間自分の体の変化を確認出来ないとしたら誰でもトレーニングのモチベーションは消え去ってしまうことでしょう。
特に抜けがちな視点が「勉強を始める前に、まずテストを受けてみる」ということです。
「ある程度聞こえるようになってから、、、」と思うかもしれませんが、これでは意味がありません。
そこから積んだトレーニングで実力がついたかどうか、あとから分からなくなってしまうためです。
「テストを受ける→勉強を始める→定期的にテストを受ける」という流れで、自分のリスニング能力の変化が実感出来るはずです。
⑤スラッシュ・リーディングを取り入れる
スラッシュ・リーディングとは、英文を構造上の切れ目で切ってカタマリ単位で英文を解釈していく読解法です。
英文の切れ目ごとに「/」スラッシュを打っていくため、こういった呼び方をしています。
スラッシュ・リーディングが出来るようになると、英文の意味を前から「英語の語順のまま」取っていくことができるようになります。
This book is the first of its kind in the second language (L2) that is entirely devoted to discussing motivational strategies, that is, methods and techniques to generate and maintain the learners’ motivation.
この英文をスラッシュで区切ると…
This book is the first of its kind / in the second language (L2) / that is entirely devoted / to discussing motivational strategies, / that is, / methods and techniques / to generate and maintain / the learners’ motivation.
→この本は最初の類の本です。第二言語習得に関する。完全に専念している。モチベーション戦略の議論に。つまり。方法と技術です。生み出して維持するための。学習者のモチベーションを。
簡単で短い文章だったら、後ろから意味を取っていてもなんとかなるかも知れませんが文章が長く、複雑になってくるとこのように前から意味を取っていく技術が必要になってきます。
始めは上のスラッシュで区切った訳が不自然に感じるかも知れませんが、次第に慣れてくると日本語の語順で読んだときと同じような理解が得られるようになります。
リスニングでは、英文を遡って意味を取り直すことは出来ませんから、このように英文を聞こえてきた順に処理していくことが重要です。
⑥自分の弱点に効くトレーニングに取り組む
リスニングの学習理論はごまんとありますが、大切なのは「自分の弱点に効く学習」です。
音声知覚が弱いなら、音声知覚に効くトレーニングを、意味理解が弱いなら意味理解に効くトレーニングをするのが効率的です。
万人にとってピッタリの学習方法はありませんから、この記事で繰り返し紹介している第二言語習得理論をもとに自分の弱点を洗い出し、その弱点にあったトレーニングをするのがおすすめです。
第二言語習得理論に基づく弱点分析の例
・スクリプトを見ればスラスラ読めるのに、音声になると聞き取れない
→音声知覚に問題あり。
→「音素」「音声変化」の知識がないなら、発音の勉強
→発音の知識があるなら、発音の知識の運用経験が足りないので7割聞こえる音源で多聴
・1つ1つの単語は聞き取れているが、聞き終わった後に内容が頭に残っていない
→意味理解に問題ありの可能性。
→スクリプトをスラスラ読める?
→日本語の語順にしていない?
→一言一句聞き取ろうとしていない?
→まずは多読で意味処理のスピードをあげよう。
→そもそも読めてないなら、文法・単語を補強しよう。
英語のリスニングの勉強の進め方
さて、いよいよ具体的なリスニング学習の進め方を紹介していきます。
この章では大まかなリスニング学習のスタートの切り方を説明しています。
まず最初にするのはリスニングのテストを受けて、今の実力を把握することです。
自分の現在地を知ることで、その後の目標設定や教材選定に役立ちます。
初学者なら英検、中級者以上ならTOEICがおすすめです。
初学者の場合、TOEICの音源がスピードも速く内容も難しいため、あまり伸びを感じられない可能性が高いです。
英検は級によって、音源のスピードや内容のレベルが分かれているため、過去問を買って正答数がどれだけ伸びたかを確認するといいです。
ちなみに英検の過去問はリスニングの音源含めて、直近の問題が無料で公開されているためそちらで確認してもOKです。
TOEICの場合は「SANTA TOEIC」というアプリで、プラマイ50点の精度で無料でスコアの予測ができるのでおすすめです。
現在地を把握したら、リスニングで目指すレベルと期限を設定しましょう。
漠然と取り組んで続けられるのは最初の内だけです。
ここで明確に期限と目標を決めておくことで、日々の学習に緊張感が生まれます。
- 3ヶ月後に英検3級の過去問を8割正答できるようにする
- 6ヶ月後にTOEICのリスニングスコアを400点にする
などの目標を立てましょう。
目標の期限までが遠い場合は、中間目標も併せて設定すると効果的です。
目標を達成する上で、障害となっているのはリスニングのうち、どの能力でしょうか?
第二言語習得理論に沿って、
- 「音素」「音声変化」の知識が足りない?
- 英語の音声を聞いた量が足りない?
- 意味処理が遅い?
- 英文法・語彙が不足している?
- 目標のスクリプトを読解できない?
など何がネックになっているかをここで明確にしましょう。
「リスニング能力が不足している」と一口に言ってしまうのではなく、その中でもどの能力に弱点があるのかを明確にすることで、その後のトレーニングを効果的に進められます。
いよいよ実際に取り組むリスニング・トレーニングのカリキュラムを決定しましょう。
ステップ3で明確になった弱点を埋めるトレーニングを具体的に決めていきましょう。
- 使用する教材
- 教材の使い方(音読?シャドーイング?精読?)
- 1日何ページ進める?
このあたりを仮でもいいので決めましょう。
計画を立てたら後はそれを実行に移しましょう。
特に計画を始めてすぐは、思うように進まないことが多々起こることでしょう。
その際は柔軟に、計画を修正していくようにしましょう。
第二言語習得に基づいたリスニング・トレーニングの決め方
上の章ではリスニング学習の大まかな始め方を紹介しました。
この章では第二言語習得理論に沿って、弱点別におすすめのリスニングのトレーニングを紹介します。
①データベース【発音】に課題がある場合におすすめのトレーニング
リスニングのために必要な発音上の知識は「音素」「音声変化」の2つです。
両方合わせても、知識の量としては多くないので一番最初に集中的に取り組んでしまうのがおすすめです。
音素については、「DVD&CDでマスター英語の発音が正しくなる本」がおすすめです。
発音を勉強するときは、必ず口の動きが確認出来るように映像付きのものを選びましょう。
こちらDVDという少し古めかしいスタイルですが、分かりやすさが抜群です。
DVD編とCD編の二部構成になっています。
まずはDVD編の母音・子音それぞれを3周しましょう。
その後、CD編を3周くらいしたら、個別の音素の知識としては問題ないでしょう。
ここまでで、2週間くらいで終えられるといいです。
次に音声変化は「5つの音声変化がわかれば英語はみるみる聞き取れる」がおすすめです。
音声データ付きで、5つの音声変化がよくまとまっています。
10日間で完走できるようになっています。
発音の学習のポイントは「完璧主義にならないこと」です。
一定の発音と知識が手に入ればOKです。
100%の発音になってから、次へ進むのは効率が悪いので「後で出来るようになる」と割り切って進めてしまいましょう。
②データベース【語彙・文法】に課題がある場合におすすめのトレーニング
リスニング教材のスクリプトを読んでも、英文の意味がいまいちつかめない場合、語彙・文法に問題があるといえるでしょう。
それぞれ英文法テキスト・単語帳(アプリ)での学習をおすすめします。
中学レベルの英文法なら「中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく。」がおすすめです。
問題演習を進めながら、全体を2〜3周しておくといいでしょう。
中学レベルの英単語が不安なら、高校入試レベルの単語帳がおすすめです。
更に上級のリスニングには、高校基礎レベルの英文法があるとベターです。
「Mr.Evineの英文法ブリッジコース」は名前の通り、中学レベルと高校レベルのブリッジ=橋渡しレベルで、無理なく高校基礎内容が身につきます。
高校レベルの語彙に問題がある場合は、「キクタンBasic」「キクタンAdvanced」の2冊を完成させるといいでしょう。
こちらは4000語レベルで、英検でいうと準2級より少し上のレベルです。
余裕があれば、以下の6000語レベル、高校上級レベルまで仕上げておくと良いでしょう。
英検2級より少し上のレベルです。
③音声知覚に課題がある場合におすすめのトレーニング
音の聞き取りに問題があり、かつ「音素」「音声変化」の知識が十分ある場合は、多聴トレーニングをおすすめします。
多聴トレーニングとは、初見で7割くらい内容が理解できるレベルの音源を音と意味が遅滞なく処理できるまで繰り返し練習するトレーニングです。
多聴の「多」が表す通り、しっかり復習した後は教材を変えていろんな題材や長さの音源で練習していきます。
大切なのは教材選定と、復習の加減です。
教材選定については、音源の速さを重視しましょう。
リスニング教材を選ぶ際に知っておくべき指標として、WPM(words per minute)というものがあります。
これはその名の通り、1分間あたりに読まれる英単語数を表しており、リスニング教材を決めるときに有効です。
参考までに、WPMのレベル感を紹介しておきます。
WPM | |
---|---|
高校入試レベル | 130程度 |
大学入試レベル | 150程度 |
TOEIC | 175程度 |
WPMごとのオススメ教材を紹介します。
WPM〜120のおすすめリスニング教材
ESL Fastはレベル別に音源とスクリプトが揃っている無料学習サイトです。
レベルごとにWPMの記載がありますが、実際にはズレが生じているので注意しましょう。
無料なのでスクリプトにミスが有るのも注意ですが、手元に置いて練習するために印刷するかiPadに取り込んで使用するのがおすすめです。
私が実際に図った限りでは以下のようになっています。
- レベル1:90〜100
- レベル2:115
- レベル3:120
- レベル4:125
WPM120〜140のおすすめリスニング教材
無料の教材だと、このあたりのレベルが手薄なので、「英会話・ぜったい・音読(標準編)」がおすすめです。
中学校の教科書レベルの音源・内容で練習ができます。
12レッスン分あるので、不足はしないでしょう。
WPM145〜150のおすすめリスニング教材
「英会話・ぜったい・音読(挑戦編)」が同じくTOEICレベルまでのつなぎの教材としておすすめです。
高校の教科書レベルの英文で構成されています。
WPM175のおすすめリスニング教材
このレベルからは通常のニュースやネイティブ向け動画などの教材を使用するといいでしょう。
Voice Tubeは、Youtubeからの抜粋でCEFRに基づくレベル別の動画でリスニング練習ができます。
VOAはVoice of Americaというアメリカのメディアが運営している学習者向けのレベル別プログラムです。
両方ともスマホアプリ版があります。
音声知覚では、多聴トレーニングと合わせて英単語を覚える際に意味と一緒に正しい発音も覚える努力が必要です。
多聴の際は、ただ一度聞いておしまいではダメです。
具体的な取り組み方は以下のようになります。(再掲)
スクリプトを見ずに、全体の意味をつかめるように聞いていく。
細かく、音や意味などを聞き取ろうとせずに全体として「こんな話をしている」というのが分かればOK。
始めた聞いた時点で7割くらい意味が分かるものが教材のレベル的にベスト。
それ以上聞き取れない場合は、教材が難しすぎるので、レベルを落としましょう。(リスニングはリーディングに比べて、練習する教材のレベルは思ったよりも簡単なものでOK。)
3回程度聴き「この辺が聞き取りづらいな」というところを大雑把にでも把握しておく。
スクリプトを見ずに、聞き取れないところを何度も聞いて弱点を洗い出す。
ステップ1で大雑把に捉えた、弱点の部分を5回は聞いてみましょう。
5回聞いても聞き取れない箇所は、それ以上聞いても変わらないのでほどほどに。
ここで初めてスクリプトを読んで、わからない単語は調べて意味を取る。
Step2で分かった弱点を音声変化をもとに分析する。
音声変化の分析の具体例
an umbrellaが聞き取れなかった
→an umbrellaでは「連結」が起きて、「アナンブレラ」と読まれると分析する
→実際の音源を聞いて「アナンブレラ」と言っていることを確認する。
→合っていればOK。違っていれば、あらためて分析出来ていない箇所を検討する。
まずはスクリプトありで、意味を理解しながら聞けるようになる。
最終的にはスクリプト無しで意味を理解しながら聞けるようになるまで聞く。
④意味理解に課題がある場合におすすめのトレーニング
意味理解に課題がある場合、課題を更に細分化しましょう。
- 時間を掛けてもスクリプトを一人で全訳できない
- 時間を掛ければ読めるが、一読でスラスラ意味をつかめない
1「時間を掛けてもスクリプトを一人で全訳できない」場合、そもそも意味理解の力が不足していることを意味します。
すでに文法・語彙は問題ないでしょうか?
英単語・文法は分かるのに、読めない場合は知識を運用する能力に欠けていると言えます。
構文などの解説が充実した受験参考書などで聞き取りたい英文のレベルまで、精読できる英文のレベルを上げられるよう勉強しましょう。
「英語長文レベル別問題集」は受験コーナーに行けば手に入ります。
手にとってちょうどよいレベル感のものを選ぶといいでしょう。
2「時間を掛ければ読めるが、一読でスラスラ意味をつかめない」場合、意味処理が正確ではあるものの、スピードが十分でないことを意味しています。
この場合は、単純にリーディングの本数が少ないために処理が遅いことが予想されるため、多読トレーニングを行うといいでしょう。
自分の読める英文の7〜8割位、つまり辞書無しでほぼほぼ正確に意味を取れるレベルの英文をたくさん読んでいくと良いです。
ここでは、新しい知識の獲得ではなく、すでに持っている知識の運用能力を最大化させることが目的なので、単語の意味や文法が分からないところは飛ばしてしまってOKです。
2〜5%ほど分からない単語があったり、解説を読まないと意味が取れない場合、教材が難しすぎるといえます。
目安として、500語の英文中に10〜25個、分からない英単語が含まれている場合多読の教材としては難しすぎると言えます。
多読ではとにかく読む英文の量を意識してください。
一人で読み進められる難易度で、解説や辞書などは開かずにとにかく大量に読みます。
どれくらい読めばいいか、についてはマジックナンバーはありませんが、京都大学の青谷正妥氏によると「年間100万語」を目安に多読を行うのが効果的であるとされています。
年間100万語ということは、1日あたり約2,700語となります。
平均的な日本人のリーディングスピードがwpm80〜100(1分間で80〜100語)ですから、30分もあれば2,700語は読めてしまうことになります。
もちろん多読のペースを上げれば、その分意味理解の処理スピードの成長速度も早くなりますが、一般的に言って最低1日30分の多読で、リスニングにおける意味処理のスピードを有意に向上させることができるといえるでしょう。
多読で大切なのは以下の点です。
- つまらない本は読まない
- 辞書や文法書を使わない
- 一言一句理解しようとしない
- 簡単すぎるレベルから始める
まず、つまらないと感じながらの多読は辞めましょう。
「勉強だから我慢して読む」というスタイルは長続きしません。
この世には無限の読み物がありますから、楽しいと感じるものだけを読んでいればOKです。
辞書や文法書はなるべく使わないようにしましょう。
そもそも辞書や文法書を使わないと読めない教材は多読には不向きです。
質より量で、とにかく今ある知識でたくさんの英文を読みこなしていきましょう。
辞書や文法書を使いたくなるのは「一言一句理解しようとしている」からです。
中学・高校の授業で扱われる精読では、たしかにすべての英単語の意味と文法を完璧に理解することが求められましたが、多読の目的は新規知識の獲得ではなく、現優戦力の最大化です。
すべてを理解する暇があったら、どんどん新しい英文に触れて、処理能力を高めていきましょう。
精読能力が十分でない場合は、時折、先生を付けたり、解説が詳しい参考書を使用して精読に取り組むことが大切です。
あくまで処理能力が遅い方は「多読を最優先すべき」ということです。
多読の教材レベルですが、本当に簡単に読めるものからでOKです。
大人の方でも、子供向けの本で多読をスタートすることがおすすめです。
多読ではたくさんの読み物が必要になるので、普通に学習者向けのレベル別の読み物教材を購入してもいいですがかなりの出費になります。
現在無料・低価格で利用できるおすすめのサービスを紹介します。
多読の森は、月額制で学習者向けの多読教材が読み放題となるサービスです。
ブラウザ上で電子書籍の形式で読書ができます。
アプリ版がないので、いちいちログインするのが面倒ですが、レベル別で検索ができたり、読み終わった語数を自動でカウントできたりするので多読学習において本当に便利です。
ちなみにネイティブキャンプ会員は無料で使えます。
金額も1000円くらいなので、月1冊以上読むならお得です。
他にはkindle unlimitedや、polyglots, Lit2Goなどがおすすめです。
kindle unlimitedは月額1000円で指定された読み物が読み放題ですが、本当の洋書ばかりなので上級者向けです。
polyglotsは無料で使える英語学習キュレーションサイトです。
ニュース記事などを難易度、長さ、ジャンルなどでソートして選ぶことができます。
Lit2Goは著作権が切れた洋書を無料で読めるサイトです。
これらのアプリ・サイトについては以下の記事で詳しくまとめています。
英語のリスニングの間違った学習方法
リスニングの勉強を効率的に進めるためには、間違った学習方法を知っておくことが必要です。
時にはネット上で進められていることがある以下の勉強法は、科学的にみて効果が薄いと言える学習方法です。
- 聞き流し
- 洋画や洋楽を見る・聴くだけ
- 速い・難しいと感じる音源での精聴
①聞き流し
英語学習における「聞き流し」とは、聞こえてくる音に集中せずに大量の英語音声を耳に入れる学習法です。
例えば、家で英語のニュースを特に聞き取ろうとせずに聞いたり、何か別のことをしながら英語のラジオを聞いたりする状況が聞き流しだと言えます。
聞き流しの際には、選択的注意が働かず、聞こえてくる英語はただの雑音として認識されてしまうため、聞き流しをしても効率よくリスニング能力を向上させることは難しいです。
詳しくは以下の記事でまとめています。
②洋画や洋楽を見る・聴くだけ
洋画や洋楽には日常生活で使われない詩的な表現やスラングが多数登場する上、スピードもかなり速いです。
ある程度のレベルがあって、こういったスラングなどをたくさん学びたい場合は教材にしてもいいですが、基礎段階や試験でのリスニングの成績を向上させたい場合は遠回りになってしまいます。
③速い・難しいと感じる音源での精聴
リスニングの音源を使ったトレーニングには、大きく「精聴」「多聴」の2種類に分けられます。
精聴とは、音源を繰り返し何度も細部まで聞き取れるように精密に練習していくトレーニングです。
多聴とは、精聴に比べると1つの音源の繰り返しの数を少なく、たくさんの音源で練習していくトレーニングです。
基本的に精聴の目的は新しい知識(未知の文法や英単語)の獲得が主になりますが、これはリーディングで精読した方が効率的であります。
一方で、多聴の目的はすでに持っている知識(英文法、音、語彙、音素、音声変化)の戦力最大化です。
日本人の学習者のほとんどが、知識量の不足のためにリスニングに苦戦しているのではなく、音声知覚の処理力(現有戦力を使いこなして、英語の音を聞き取る力)が不足しているために苦戦しているのです。
ですから、リスニングにおいては自分の聞き取り能力で、はじめて聞いて7割程度理解できる「実力-1」のレベルのテキストを選んで、多読をすることによって効率的に音声知覚の能力を上げることができます。
もちろん、多読と言ってもスクリプト無しで一回聞いてお終い、ではダメです。(それは聞き流しです)
- スクリプトがある教材で
- 7割程度聞き取れるレベルの教材で
- 音と意味を遅滞なく処理できるまで
練習しましょう。
リスニングの学習を一人で進める自信がない方へ
この記事では、一人ひとりの弱点に合わせたリスニング学習を紹介しました。
とはいえ、一人で取り組むとなると
- 自分の弱点がいまいちわからない
- トレーニングを自分で組めない
- モチベーションや進捗管理ができない
といった悩みが出てくるのも事実です。
以下はこの記事を執筆している私が運営している英語コーチングサービスとなります。
リスニングはもちろん、英語のお悩みとご希望をもとにあなた専用のカリキュラムの作成・実行をマンツーマンでサポートしています。
サービス名 | Satellite | ||
---|---|---|---|
URL | https://keizokushitai.com | ||
受講期間(ヶ月) | 4 | 6 | 12 |
料金 | ¥308,000 | ¥445,500 | ¥792,000 |
入会金 | ¥55,000 | ¥55,000 | ¥55,000 |
総額 | ¥363,000 | ¥500,500 | ¥847,000 |
月額料金 | ¥90,750 | ¥83,416 | ¥70,583 |
受講スタイル | オンライン | ||
添削 | ○ | ||
教材 | 市販 | ||
面談 | 月4回50分 | ||
学習時間 | 制限なし | ||
月払い | ○ | ||
割引 | 紹介・学生・即日割引 | ||
初学者向け | ○ | ||
ビジネス | ○ | ||
英会話 | ○ | ||
TOEIC | ○ |
英語コーチングの中では珍しく、毎日の添削サービスが付いているのが特徴です。
発音矯正、英作文から英会話の添削までついているのは唯一無二のサービスと言えます。
初心者の方は英語のプロから添削を受けることで成長の角度を上げることが出来ます。
また大手と違い「カウンセリング担当者=自分の担当コーチ」であるため、「担当のコーチと合わない」という可能性が少なくなります。
通常、無料カウンセリングは営業の担当者が行い、実際のコーチングは英語コーチが担当します。
そのため無料カウンセリング時に抱いた印象と実際のコーチングの印象が異なる、ということがよくあります。
どのコーチがアサインされるかはわからないので、自分の性格と合わなかったり、十分な実力がないコーチが担当になる可能があります。
そういったリスクがないのは、すべての業務を一人の担当している個人サービスならではと言えるでしょう。
個人で提供しているサービスのデメリットとして、返金保証がないことが挙げられます。
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