リスニングを劇的に向上!シャドーイングの効果と具体的な学習方法
シャドーイングとは、英語学習のトレーニングの一つで聞こえてきた音声を即座に発音していきます。
影のように音声にくっついて追いかけていくため、シャドーイングという名前になっています。
以前は通訳養成講座のカリキュラムで採用されていたシャドーイングですが、最近では一般の英語学習者にも効果が高いとして取り入れられ始めています。
この記事ではシャドーイングについて以下の疑問に答えていきます。
・シャドーイングにはどんな効果がある?
・シャドーイングはどれくらいで成果が出る?
・シャドーイングの注意点は?
・具体的なシャドーイングのやり方は?
英語の総合力アップに非常に効果が高いシャドーイングをぜひ取り入れてみましょう!
シャドーイングの効果
シャドーイングの効果は主に次の4つです。
- リスニング力の向上
- 意味処理のスピード向上
- スピーキング力の向上
- モニタリング力の向上
1つずつ確認していきましょう!
リスニング力の向上
リスニングの原則に「発音できないものは聞き取れない」というものがあります。
シャドーイングは聞こえてきた音を口に出すトレーニングであるため、英文がシャドーイング出来るようになれば、その英文は聞き取れているということが出来ます。
聞こえてきた音を正しく捉えて発音することで、リスニングの音声知覚の能力を伸ばすことが可能です。
英語コーチングにおいても、中級者以上の方のリスニング力をあげようと思うと必ずと言っていいほどこのシャドーイングを採用します。
意味処理のスピード向上
シャドーイングで、繰り返しインプットを行うことで英文に含まれる語彙・文法の知識が内在化され、英文の意味を処理するスピードが上昇します。
内在化とは、知識が深いレベルで刷り込まれて瞬時に引き出せるレベルになることです。
例えば、I found the article interesting.という英文があったとしましょう。
はじめのうちは、「I=私、found=find=見つけるの過去形、article=記事、interesting=おもしろい」という語彙知識と「theだから共通認識がある記事で、findが第5文型を作っていて、article=interestingという関係がある」文法知識を運用して「私はその記事が面白いと思った」という意味を時間をかけて導きます。
しかし、知識が内在化されるとこれらが高速で意図せずとも半ば潜在的に意味が導けるようになります。
これにより、リーディングのスピードが上がったり、リスニングで意味を取っているうちに置いていかれなくなったりします。
スピーキング力の向上
シャドーイングでは、聞こえてきた音声を「声に出す」というプロセスがあるため、スピーキングの諸段階をシミュレーション的に体験する効果があります。
以下の図はスピーキングのプロセスを表したものです。
概念化とは、「お腹が空いたことを伝えたいな」という段階、文章化は「I am hungry.でOK」という段階、音声化は実際に英文を口に出す段階です。
シャドーイングでは、このうち、文章化→音声化の段階をシミュレーションするため、その結果としてスピーキング能力の向上が期待できます。
モニタリング力の向上
モニタリング力とは、一言で言えば「自分を客観視する能力」です。
シャドーイングでは、聞こえてきた音声を自分でも追って発音します。
この発音した音声はもちろん自分の耳にも入る訳ですが、このとき聞こえてきた自分の発音を客観的に判断して、お手本と同じように発音出来ているか、出来ていないならどのように修正するべきか、といったメタ視点で物事を考えています。
このモニタリング力がアップすることで、正しい修正や繰り返しの数を自分で設定する能力が身につきます。
これはいわば学習者として「英語の学習が上手」になると言え、その後の英語学習の自習効率が上がると言えます。
シャドーイングで成果が出るまでにかかる期間
シャドーイングは一朝一夕で成果が出るわけではありません。
シャドーイングした語数が増えてくるにつれて現れる効果に変化が出てきます。
もちろん何時間・何語取り組んだら必ずこうなる!というマジックナンバーはありませんが、第二言語習得理論における権威門田修平先生は以下のような「目安」を設定しています。
徐々に聞こえてきた音声を復唱することに慣れ、シャドーイング自体が違和感なくできる。
復唱の負荷が下がり、発音が高速化される。
英語の発音が自動化され、強く意識せずとも口をついて出るような感覚になる。
英語の発音が自動化され、音声知覚が苦なく出来るようになる。
「読んで分かるのに、聞いたら分からない」というリーディング能力との乖離が小さくなる。
英語力が飛躍的に伸びる前兆。
語彙・文法がすっかり定着し、定形表現などが自然に頭に入っている。
知識の運用を繰り返すことで、運用能力もついてくる。(意味処理の高速化)
スピーキングの一部をシミュレーションするアウトプットでの効果を感じる。
実際のコミュニケーションにおいて、無意識に獲得した語彙・定形表現などが口をついて出るようになる。
後述するように、シャドーイングは単独で取り組むのではなく、音読やディクテーションなど他のトレーニングと組み合わせることで無理なく効率的にリスニングの能力を向上させることが出来ます。
この語数をカウントする際には、これら他のトレーニングで音を聞いた・発音した数を入れてOKです。
例えば、毎日400語程度の英文を、シャドーイングを含むトレーニングで25回練習したとしましょう。
1日あたりの語数は10,000語ですから、1ヶ月間取り組めば30万語ですから、聞き取りにおいて明確な効果が期待できます。
3ヶ月強続ければ、スピーキングにおいても効果が感じられるようになるでしょう。
ちなみに私自身、この1日10,000語を練習するのに1.5時間かかっていましたが、やはり1ヶ月程度で明確な効果を感じ、3ヶ月を過ぎる頃にはスピーキングでも効果を感じるようになりました。
実際に私が音読をしていたときの体験談は以下の記事で紹介しています。
具体的なシャドーイングの取り組み方
具体的なシャドーイングの取り組み方の一例をご紹介します。
シャドーイングを単体で取り組むのではなく、音読などの比較的負荷が軽いものから徐々にステップアップ出来るように組んでいます。
- これ以上聞いても変わらない時点でストップ(3回目安)
- 意味と音の両方を取り、終わった後に「どんな内容だったか」を話して録音する
- スクリプトに書いてあるのに、録音で言及していなかった箇所と自分で聞き取れていなかったと感じる箇所にマーク
- このとき同時に英文の解釈(単語調べや英文の意味をすべて解き明かす)も行っておく
- 英文を1文流して、一時停止→スクリプトを見ながら真似して発音する
- 音声変化やイントネーションなどもきちんと再現する
- きれいに万出来るまで3回程度繰り返す
- 音源を流して、同じスピードで読めるように練習する
- 速さについていけないところ、発音がグチャッとなるところは③に戻って繰り返し練習する
- 音無しで、音源そっくりになるように繰り返し発音練習する
- スクリプトを見ずに、全体を通しでシャドーイングを完璧に出来るまで練習する
- 録音して、自分の音声がお手本と相違なくなるまで練習する
- スラッシュ(意味・構造の切れ目)ごとに前から意味を取りながらシャドーイングする
シャドーイングの注意点
シャドーイングは取り組み方を間違えたり、取り組む時期を間違えると効果が期待できません。
以下のポイントを押さえることで、シャドーイングで大きな効果を期待できます。
- 初学者はシャドーイングを避ける
- 音と意味を分ける
- レベルに合った教材を選ぶ
- リズムやイントネーションまで真似る
- 録音・添削によるフィードバックをする
- 音読やディクテーションと組み合わせる
正しく取り組んで行きましょう!
初学者はシャドーイングを避ける
初学者にはシャドーイングはおすすめできません。
というのもはじめのうちは英語の発音をするので精一杯で、「音を正確に聞き取る・理解する・発音する」必要があるシャドーイングは負荷が高すぎるためです。
初学者は、発音が自動化された後にシャドーイングに取り組んでみましょう。
初学者には音読・リピーティングがおすすめです。
音読なら文字情報をもとに、発音だけに集中でできるため無理なく自然な発音を身につけることが可能です。
ただ自己流で読むと間違った発音が身についてしまうので、リピーティングを取り入れましょう。
リピーティングとは、一文英文の音声を流したら一時停止を押して、そっくり真似して発音するトレーニングです。
文字情報から音読する前に、音声情報を取り込むことで正しい発音が身につきます。
シャドーイングに移行しても良い、という目安は発音・中学語彙・文法の学習が終わった後、音読・リピーティングでで3万語をクリアした頃合いでしょう。
音と意味を分ける
シャドーイングはインプット・アウトプットを同時進行で進める多重処理であるため、はじめから音声知覚と意味理解を両立しようとするのは避けましょう。
はじめは音だけを正確に聞き取り、それが出来るようになったら意味を理解しながらのシャドーイングに向かいましょう。(コンテンツ・シャドーイング)
人間の脳のキャパシティは一定で、はじめから音と意味を取るのは負荷が高いです。
音声知覚が自動化されれば、自然と意味を同時に考える余裕ができます。
ですから、シャドーイングに取り組む際は、まずは音の聞き取りが自動化出来るまで練習し、その後で文法・語彙を運用して一緒に意味を取るようにしましょう。
音と意味を分けてシャドーイングに取り組む、というテーマで書かれている稀有なテキストとしてK/Hシステムがあります。
以下の記事では実際に私が使ってみた上でのレビューを載せています。
レベルに合った教材を選ぶ
シャドーイングに限らず、リスニングで使用する教材はかんたんなものにしましょう。
目安としては、初見で聞いて7割位意味が取れるものがいいでしょう。
新しい知識を獲得するためのリーディング(精読)では、自分の実力+1程度の教材を選びますが、処理能力を高める多読・多聴においては、自分の実力ー1、多聴に関してはー2〜ー5程度が良いとされています。
精読に使っている辞書を使えばギリギリ読めるようなレベルは避けましょう。
リズムやイントネーションまで真似る
シャドーイングするときは、話者になりきったつもりでプロソディーまで徹底的に真似しましょう。
プロソディーというのは、発音の中で音素や音声変化といった主な要素以外の「リズム・アクセント・ピッチ」などのことです。
日本人の英語が伝わらないとき、このプロソディーが影響しています。
日本語の発音は、抑揚がなく一定の「ダダダダダダ」というものですが、外国人が日本語を習得するときに苦戦するのはこのプロソディーの差異にも原因があります。
例えば、「He has an umbrella.」というのも一定のリズムで読んでしまっては非常に違和感のある読みになります。
has, umbrellaという内容語は強く・はっきり・ゆっくりと読み、それ以外の機能語は弱く・あいまいに・速く読まれることで英語独特のリズムが生まれます。
シャドーイングで聞こえてくる音声を自己流で読むのではなく、お手本そのままに読む意識を持つことで聞き取りにおいてもスピーキングにおいてもより高い効果が得られるでしょう。
録音・添削によるフィードバックをする
シャドーイングした音声は、定期的に録音してフィードバックを受けましょう。
理想はプロに添削をしてもらうことですが、難しければ自分で録音したものをお手本の音声と聞き比べてみましょう。
シャドーイング中ももちろん自分の声は聞こえてくるわけですが、集中していると案外自分のことを客観的に見れなくなっているものです。
あらためて録音したものを聴き比べてみると、音素・音声変化・プロソディーがお手本とズレてしまっている箇所に気付けるはずです。
音読やディクテーションと組み合わせる
繰り返しになりますが、多重処理のシャドーイングは負荷が高いです。
初見の英文をスクリプト無しで数回シャドーイングして終わりというのは現実的ではないでしょう。
この記事で紹介しているように、音読やディクテーション、レシテーションなどと組み合わせていくと飽きも来づらく無理なくステップアップしながら高い学習効果を得られるでしょう。
シャドーイングにおすすめの教材
シャドーイングは1つの音源を繰り返し学習するので、操作性が高い教材がおすすめです。
最近は便利なアプリも増えていますが、テキストでの学習もいいものですよね。
ここでは、シャドーイングにおすすめのアプリ・テキスト教材をそれぞれご紹介します。
シャドーイングにおすすめのアプリ教材
シャドーイングにおすすめのアプリは以下の2つです。
Voice Tube
すでに紹介したGoogle Chromeの拡張機能「Language Reactor」と同じ学習への活かし方ができるツールです。
動画の本数は限られますが、Chromeの拡張機能を使わなくても、簡単に日英字幕を両方見ながら学習ができます。
VOA
VOAはVoice of Americaというアメリカのメディアが運営している学習者向けのレベル別プログラムです。
シャドーイングにおすすめのテキスト教材
テキストでのシャドーイングには以下のテキスト教材がおすすめです。
「英会話・ぜったい・音読」シリーズは、中学〜高校レベルまでの3つのレベルで教材が分かれており、教科書の抜粋で構成されているため、非常に質の良い英文でシャドーイングが出来ます。
実際に私は、このシリーズの教材でのシャドーイングを終わらせました。
教材の詳細については、以下の記事でレビューしています。
シャドーイングに関してよくある質問
- シャドーイングだけで英会話が出来るようになりますか?
-
シャドーイングだけでは英会話は出来るようになりません。
実際の英会話や、継続的なチャンクの獲得、基礎文法のパターンプラクティスなどを行うことで英会話のレベルが上っていきます。
- 添削はどのように受けたら良いですか?
-
外部サービスであれば、英語コーチング、英会話スクールなどで添削を実施しているところを利用すると良いでしょう。
発音に不安があるうちは、シャドーイングではなく音読やリピーティングの音声を添削してもらいましょう。
- シャドーイングし終えた時に、意味がまったく考えられていない気がします。
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この記事でも紹介しているように、音と意味を分けて仕上げていくといいでしょう。
音が余裕を持って100%取れるようになれば、自然と意味に注意を向けやすくなります。
まずは、音を仕上げ、次に口ではシャドーイングをし、頭では意味を応用にするといいでしょう。
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