具体的な英語多読・多聴トレーニングの取り組み方、教材を解説
英語学習をしていて「多読・多聴」という言葉を聞いたことはないでしょうか?
その名の通り、たくさん読む・聞くというトレーニングで、多くの英語の達人がこの多読・多聴を推奨しています。
とはいえ、イマイチ具体的な取り組み方やポイントが分からない人も多いのではないでしょうか?
この記事では以下の疑問に答えていきます。
・多読・多聴って何?
・英語多読・多聴の効果は?
・英語多読・多聴のポイントは?
・英語多読・多聴の具体的な学習方法
正しく多読・多聴トレーニングをすれば効果絶大です!
多読・多聴って何?
多読・多聴とは、その名の通り英語学習において大量の英文を読む・聞くトレーニングです。
例えば、学校英語の授業で取り組むのは「精読」といって、少量の英文をすべての語彙・文法・意味を明らかにして丁寧に読解していきます。
一方、多読は細部までこだわりすぎずに8割程度の理解度で大量の英文を読んでいきます。
多聴はたくさんのスクリプト付きの英語音声を聞いていくトレー二ングです。
勘違いされがちですが、多聴と聞き流しは別物です。
多聴トレーニングは、多読トレーニングと違って一度聞いておしまいではありません。
スクリプトのある音声を繰り返し聞いていきます。
聞き流しについては、以下の記事で詳しく解説をしています。
英語多読の効果は?
英語多読の効果は、以下です。
- リーディングのスピードが上がる
- リーディングの理解度が向上する
- リスニングで遅滞なく意味が取れるようになる
第二言語習得理論の観点からすると、多読の効果は「意味理解能力の向上」です。
意味理解とは、リーディング・リスニングにおいて英文の意味を解釈するプロセスです。
意味理解の際には、単語の意味・文法知識などを参照しながら英文の意味を明らかにしていきます。
多読はこの意味理解の作業に特化したトレーニングですから、たくさんの英文を読むことで意味理解のスピードや正確性を向上させることが出来ます。
リーディングでは音を聞き取る過程はないので、「リーディングの能力=意味理解の能力」と言えます。
そのため、リーディングにおける英語多読の効果としてはリーディングのスピードが上がり、理解度が向上することが期待できます。
以下はリスニングのときの脳内の処理を図式化したものです。
リスニングでは、音声知覚→意味理解というプロセスで聞こえてくる英語を理解します。
音声知覚とは、聞こえてくる音声を認識するプロセスです。
音声知覚の後は、実際に聞こえてきた英語の意味を理解する意味理解のプロセスに移行します。
すでに書いた通り、英語の多読は意味理解の能力向上に特化したトレーニングですから、リスニングにおいても意味理解のスピード向上に大きく貢献します。
リスニングにおいて、意味理解の能力が向上すると以下のような悩みが解消できます。
- 「音は聞こえるけれど、聞き終わった後に意味が頭に残っていない」
- 「前の英文の意味を考えているうちに、次の英文が流れてきてしまう」
英語多聴の効果は?
英語多聴の効果は、以下です。
- リスニングで音が取れるようになる
- リスニングで遅滞なく意味が取れるようになる
第二言語習得理論から言うと、英語の多聴トレーニングで鍛えられるのは「音声知覚」「意味理解」の能力です。
上の図でも分かる通り、多聴トレーニングは音声知覚・意味理解のプロセスというリスニングそのものと同じ流れを踏んでいるので、当然このスキルが向上します。
たくさんの英語の音を聞き、それをスクリプトと照らし合わせる作業を続けることで徐々に初見の英文でもしっかりと音を聞き取れるようになります。
また、リスニングの際にしっかり意味を考えることで意味理解のトレーニングにもなります。
意味理解のスピードに特化して向上させたい場合は多読トレーニングの方が効果的ですし、スクリプトを読んでも理解できない場合はそもそもの読解力が不足しているため精読トレーニングや語彙・文法の学習をしたほうがいいでしょう。
英語多読のポイントは?
英語の多読を実践する上でのポイントを紹介します。
- たくさん読む
- つまらない本は読まない
- 辞書や文法書を使わない
- 一言一句理解しようとしない
- 簡単すぎるレベルから始める
ただたくさん読む上でもポイントがありますよ〜!
①たくさん読む
多読ではとにかく読む英文の量を意識してください。
一人で読み進められる難易度で、解説や辞書などは開かずにとにかく大量に読みます。
どれくらい読めばいいか、についてはマジックナンバーはありませんが、京都大学の青谷正妥氏によると「年間100万語」を目安に多読を行うのが効果的であるとされています。
年間100万語ということは、1日あたり約2,700語となります。
平均的な日本人のリーディングスピードがwpm80〜100(1分間で80〜100語)ですから、30分もあれば2,700語は読めてしまうことになります。
もちろん多読のペースを上げれば、その分意味理解の処理スピードの成長速度も早くなりますが、一般的に言って最低1日30分の多読で、リスニングにおける意味処理のスピードを有意に向上させることができるといえるでしょう。
②つまらない本は読まない
まらないと感じながらの多読は辞めましょう。
「勉強だから我慢して読む」というスタイルは長続きしません。
この世には無限の読み物がありますから、楽しいと感じるものだけを読んでいればOKです。
③辞書や文法書を使わない
そもそも辞書や文法書を使わないと読めない教材は多読には不向きです。
質より量で、とにかく今ある知識でたくさんの英文を読みこなしていきましょう。
④一言一句理解しようとしない
辞書や文法書を使いたくなるのは「一言一句理解しようとしている」からです。
中学・高校の授業で扱われる精読では、たしかにすべての英単語の意味と文法を完璧に理解することが求められましたが、多読の目的は新規知識の獲得ではなく、現優戦力の最大化です。
すべてを理解する暇があったら、どんどん新しい英文に触れて、処理能力を高めていきましょう。
⑤簡単すぎるレベルから始める
多読の教材レベルですが、本当に簡単に読めるものからでOKです。
大人の方でも、子供向けの本で多読をスタートすることがおすすめです。
基準としては辞書なしでも話を追える程度です。
簡単な英文を大量に読むことで処理スピードを上げることが目的なので、大学受験のような教材選びにならないように注意しましょう。
英語多聴のポイントは?
英語多聴のポイントを紹介します。
多読と違って、「とにかく量を聞く」のとは少しわけが違いますので中が必要です。
- 発音する
- 繰り返し聞く
- 先に発音を勉強する
- つまらない音源は使わない
- スクリプトのある教材を選ぶ
- 簡単すぎるレベルから始める
1つずつ確認していきましょう!
①発音する
多聴では「ただ聞いているだけ」ではNGです。
実際に自分の口を動かすことで、連動して脳も働き始めます。
リスニングの原則として「発音出来ない音は聞き取れない」と思ってください。
実際には聞こえているつもりでも、案外口に出そうとしてみると発音できないことはあるものです。
この場合は、脳内で「7割位聞き取れればいいや」という意識が働いてしまい、実際には詳細に聞こえていないところで無意識に「聞こえた判定」を下してしまっています。
実際発音することで、発音出来ない箇所=実際には聞き取れていない箇所が明らかになるので、リスニング学習で弱点が明確になります。
②繰り返し聞く
多読と多聴の一番の違いは、多読は一期一会でたくさん英語を読んでいきますが、多聴ではある程度の回数の繰り返しの学習が必要となる点です。
これは多読と多聴の学習上の目的の違いから来ています。
多読の目的は意味理解における処理能力の向上です。
言い換えれば、処理の繰り返しにより意味を捉えるスピードを上げることが目的です。
そのために、今ある語彙・文法知識をフル活用して次から次へと英文を読んでいきます。
多聴のメインの目的は音声知覚、すなわち音を正しく聞き取る力の向上です。
音声に関する知識(単語の発音・音素・音声変化)をもとに、自分が聞こえてきた音と実際にスクリプトに書かれている音を擦り合わせていくわけです。
これは多読と違って、音を掴むスピードを速めたいわけではないので、処理を繰り返すだけではNGです。
スクリプトを見て、自分の聞こえ方を改善していかないと正しい音声知覚ができないので、正しく聞き取れていない箇所は立ち止まってスクリプトを見て何度も練習しないといけないわけです。
③先に発音を勉強する
多聴トレーニングでは、スクリプトをもとに自分の聞こえ方を修正していくわけですが、自分の聞こえ方のどこが間違っているのかは発音の知識をもとに分析をかけていきます。
例えば、get out ofが「ゲット アウト オブ」と読まれず「ゲラウロブ」と読まれるのは音声変化のせいです。
このとき音声変化の知識がないと、復習のしようがないわけです。
文法を知らないのに、英文構造の解説を聞いても学習効果が薄いのと同じです。
最低限の発音の知識は1ヶ月もあれば身につきますから、勉強してから多聴に移りましょう。
発音の学習方法・オススメ教材は以下の記事で解説しています。
④つまらない音源は使わない
多読と同じで、興味のない音源での練習は控えましょう。
この世には無限に音源があるわけですから、わざわざやる気を削ぐようなつまらない音源での学習は不要です。
テキスト・アプリ・サイトなどから自分の好きな教材を選んでの学習がおすすめです。
⑤スクリプトのある教材を選ぶ
すでに「②繰り返し聞く」でも書いていますが、多聴の目的は音声知覚を正確にすることです。
スクリプトがないと、そもそも自分が聞き取れなかった英文が何と言っていたのか分からないため、復習が出来ません。
ほとんどの教材にスクリプトがついていますが、自分で好きな音源を選ぶときなどにはスクリプトを手元に用意しましょう。
⑥簡単すぎるレベルから始める
第二言語習得理論において、多聴の教材レベルは「実力−1」が適切だとされています。
初見でスクリプトがない状態で7割程度聞き取れるものがベストです。
練習していけば徐々に初見でも聞き取れる音が増えていきますから、少し簡単すぎるくらいの音源レベルでスタートしましょう。
実体験ですが、思っているよりも簡単なものでいいです。
私自身TOEICスコアが860のときに学び直しをはじめましたが、中学の教科書レベル(WPM130)程度の英文が適正でした。
特に学校教育を受けた日本人は、英語を読んだ量に比べて聞いた量が圧倒的に少ないです。
ご自身の学生時代を振り返ってみてください。
学校で英文を正確に読んでいく作業や、宿題で音読があっても、学校や家での宿題でリスニングをやった思い出はほとんどないのではないでしょうか?
ですから、プライドを捨てて思っているよりも簡単なレベルから多聴をしましょう。
英語多読の具体的な学習方法
英語多読の進め方を解説します。
多読の教材を選びます。
以下の観点で選ぶといいでしょう。
- 興味があるもの
- 本orアプリorブラウザ
- 辞書なしでも読み進めれるレベル
多読の教材レベルですが、本当に簡単に読めるものからでOKです。
大人の方でも、子供向けの本で多読をスタートすることがおすすめです。
多読ではたくさんの読み物が必要になるので、普通に学習者向けのレベル別の読み物教材を購入してもいいですがかなりの出費になります。
現在無料・低価格で利用できるおすすめのサービスを紹介します。
多読の森は、月額制で学習者向けの多読教材が読み放題となるサービスです。
ブラウザ上で電子書籍の形式で読書ができます。
アプリ版がないので、いちいちログインするのが面倒ですが、レベル別で検索ができたり、読み終わった語数を自動でカウントできたりするので多読学習において本当に便利です。
ちなみにネイティブキャンプ会員は無料で使えます。
金額も1000円くらいなので、月1冊以上読むならお得です。
次に紹介するアプリabceedは、TOEIC向けの市販教材が使い放題になるサービスです。
多読の項目もあり、大人気のラダーシリーズがかなりの冊数音声付きで利用可能です。
ラダーシリーズとは、学習者向けに語彙をかんたんにして書かれた多読用の読み物教材です。
語数もカウントできるので非常に便利です。
Globee Inc.posted withアプリーチ
他にはkindle unlimitedや、polyglots, Lit2Goなどがおすすめです。
kindle unlimitedは月額1000円で指定された読み物が読み放題ですが、本当の洋書ばかりなので上級者向けです。
polyglotsは無料で使える英語学習キュレーションサイトです。
ニュース記事などを難易度、長さ、ジャンルなどでソートして選ぶことができます。
Lit2Goは著作権が切れた洋書を無料で読めるサイトです。
これらのアプリ・サイトについては以下の記事で詳しくまとめています。
実際に読んでみましょう。
多聴と違って難しいことはありません。
多読の際はすでに確認した以下の点を意識して、年間100万語を目指して読んでいきましょう。
- 辞書を使わない
- 一言一句理解しようとしない
英語多聴の具体的な学習方法
スクリプトを見ずに、全体の意味をつかめるように聞いていく。
細かく、音や意味などを聞き取ろうとせずに全体として「こんな話をしている」というのが分かればOK。
始めた聞いた時点で7割くらい意味が分かるものが教材のレベル的にベスト。
それ以上聞き取れない場合は、教材が難しすぎるので、レベルを落としましょう。(リスニングはリーディングに比べて、練習する教材のレベルは思ったよりも簡単なものでOK。)
3回程度聴き「この辺が聞き取りづらいな」というところを大雑把にでも把握しておく。
スクリプトを見ずに、聞き取れないところを何度も聞いて弱点を洗い出す。
ステップ1で大雑把に捉えた、弱点の部分を5回は聞いてみましょう。
5回聞いても聞き取れない箇所は、それ以上聞いても変わらないのでほどほどに。
ここで初めてスクリプトを読んで、わからない単語は調べて意味を取る。
Step2で分かった弱点を音声変化をもとに分析する。
音声変化の分析の具体例
an umbrellaが聞き取れなかった
→an umbrellaでは「連結」が起きて、「アナンブレラ」と読まれると分析する
→実際の音源を聞いて「アナンブレラ」と言っていることを確認する。
→合っていればOK。違っていれば、あらためて分析出来ていない箇所を検討する。
まずはスクリプトありで、意味を理解しながら聞けるようになる。
最終的にはスクリプト無しで意味を理解しながら聞けるようになるまで聞く。
英語多読・多聴に関するよくある質問
- 精読と多読の学習効果はどう違いますか?
-
精読は、新しい語彙・文法知識が獲得出来ます。
多読は、英文を速く読めるようになります。
精読では語彙・文法をすべて調べて学習するため、新しい知識を獲得したり、難しい英文が徐々に読めるようになります。
多読では語彙・文法を調べずに大量の英文の意味を次から次へと処理するため、意味理解のスピードが向上します。
いわば精読は「新戦力の獲得」、多読は「現有戦力の最大化」が目的となります。
- 精読と多読はどちらを実践したら良いですか?
-
難しい英文を読めるようになりたいなら精読を、英文を速く読めるようになりたいなら多読がおすすめです。
中学レベルの英文精読→中学レベルの英文多読→高校レベルの英文精読→高校レベルの英文多読という進め方がいいでしょう。
まずは精読により、読める英文のキャパシティを増やし、その後同レベルの英文を多読して読解スピードを上げる。
一定の速さになった段階で高校レベルで同じ流れで勉強すれば、「速く・正確に」読解ができるようになります。
ちなみに、リスニングにおいても意味理解のプロセスが存在するので、リスニングでの意味理解についても同じことが言えます。
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