【英語コーチ解説】英語の音読は効果がない?科学的に解説
英語の達人を含め、多くの学習者がおすすめする学習法として英語の音読があります。
実際に学校の先生に音読を勧められたことがある方も多いのではないでしょうか?
とはいえ、一部の人が「音読には効果がない!」と言っている場面を現実世界でも、Web上でも見かけます。
この記事では「音読には効果がないのか?」について以下の疑問にお答えしていきます。
・英語の音読ってどんな活動?
・英語の音読にはどんな効果がある?
・英語音読の効果がないと言われるのはなぜ?
・英語の音読の効果はどれくらいで感じられる?
・効果的な英語音読の方法は?
・英語音読におすすめの教材は?
英語の音読とはどんな活動か?
英語の音読の効果について議論するには、まず英語学習時の音読時に脳がどのように活動しているのかを理解しましょう。
以下は第二言語習得理論に基づいて、音読時の脳の働きを図式化したものです。
まず、音読するテキストの文字を脳内に音声を持った記号としてインプットします。
例)「I ate an apple.」という文章を「アイ エイト アン アップル」という音として認識する。
じつはリーディングのときにも、頭の中で文字情報を音声化しており、これを音韻符号化と言います。
ただ文字を読んでいるだけなのに、音声情報に変換されるのは意外に感じるかもしれません。
しかし、日本語でも書かれている文字を読んでいる時に、自然とゴモゴモと書かれた文字を読み上げていることがあるのではないでしょうか。
この作業を繰り返すことで、次第に文字➔音声の変換(音韻符号化)が自動化されていきます。
次に、インプットした文字列を処理し、内容を理解します。
例)「I ate an apple.」=「私はりんごを食べた。」という意味だな
このプロセスではそれぞれの単語の意味を理解し、文法知識を動員して意味を導き出します。
同じ文章の文法や単語の意味を繰り返し処理することで、語彙・文法が内在化され次第に意味を理解するのが速くなっていきます。
そして、内容を理解した上で発音をします。
事前に発音の学習を済ませていれば、音読を通して正しい発音が定着します。
また、音声化というスピーキングのプロセスをたどることでスピーキング力の向上に繋がります。
最後に自分で発音した音声は自分の耳にも聞こえてきます。
自分の発音を自分で聞き、評価することで自分が正しく発音できているかを確認し、修正する力が身につきます。
このように音読は一見単純な作業に見えますが、実は脳内では複数のプロセスが同時進行で動いており、非常に効率よく様々な回路を鍛えられるわけです。
英語音読の効果
音読時の脳の動きを説明してきました。
ここからは、音読で実際に得られる効果にどういったものがあるかについてお話していきます。
具体的には次の4つです。
- リーディング能力が向上する
- リスニング能力が向上する
- スピーキング能力が向上する
- ライティング能力が向上する
1つずつ詳しく見ていきましょう。
リーディング能力が向上する
ある実験で学習者を音読を大量に行うグループと少ししか行わないグループの2つに分けたところ、5ヶ月間でリーディングのスピードに大きな差が出たそうです。
音読を大量に行った集団はもう一つの集団に比べて約24%のリーディングのスピードにおける向上が確認されました。
これはたった5ヶ月間で生まれた差ですが、年単位で考えると音読をするかしないかでリーディングのスピードが大きく変わることが分かります。
これは音読の中で文字認識と意味処理が繰り返し行われることで、「英語を英語のまま理解する」という感覚に近い形で以前よりも英文を読むスピードが上がった結果だと言えます。
リスニング能力が向上する
同様の実験で今度は授業内で音読をする回数を増やしたグループとそのままのグループとに分けて比較したところ、5ヶ月後のリスニングテストの結果に差が生まれました。
音読の回数が多かったグループは少なかったグループに比べて12%以上正答数の伸びが大きくなりました。
授業内の音読の回数を変えただけで明らかに差が生まれたというのだから驚きです。
これは音読により、意味処理能力が向上したことに加え、音韻符号化が自動化されたことによる効果であると予想されます。
また、後で紹介しますが音読の際は一緒に付属の音声を最大限活用することでさらなるリスニング能力向上につながることが期待できます。
スピーキング力が向上する
スピーキング能力においても、音読を繰り返したグループはそうでないグループに比べて有意な結果が出ました。
音読を繰り返したグループは教科書表現を約30%多く覚えていたのです。
このことから音読を繰り返すことで使うことができる表現が増え、スピーキング能力が向上することが分かります。
また、音声をしっかり聞いた上で音読を繰り返すことで自然と正しい発音が身につきます。
これも音読によって身につけられるスピーキング能力の1つです。
ライティング能力が向上する
最後に音読がライティングにも好影響を与えるということもわかっています。
音読の回数に差をつけた2つのグループで、音読の回数が多いグループはより多くの語を書き、より高い評価を獲得していたということです。
これはスピーキングと同様に音読を繰り返したことによって、使える語彙や表現が増えた結果ライティング能力の向上につながったと言えます。
英語音読の効果がないと言われる理由
英語の音読が意味がない・効果がないと言われていますが、これは間違った取り組み方をした場合に限られます。
主にネット上で「音読に効果なし」という主張の根拠になっているのは以下です。
- すぐに効果が出ない
- 音読をしても発音は良くならない
- 音読をしても文章の理解度は上がらない
- 理解していない英文を音読しても効果はない
- 音を聞かずに取り組んでもリスニングは向上しない
すぐに効果が出ない
音読に限らずですが、英語学習は短期で結果が出ることは期待しないほうがいいでしょう。
例えば、1日15分の単語学習を1週間続けたところで身につく単語の数は知れていますし、勉強せずに1ヶ月も経てば忘れてしまうでしょう。
同様に音読も1日15分を1週間続けたところで明確な変化が起きることは期待できません。
しかし、これは音読に効果がないということではなく、何かで明確な結果を得るには一定の時間が必要だということです。
音読をしても発音は良くならない
結論から言うと、音読をしても発音は良くなりません。
発音そのものは個別の音素と、音声変化を学習することで向上します。
ではなぜ音読に発音向上の効果があるのかと言われると、それは音読により事前に身に付けた発音が定着するためです。
発音を集中的に学習した後なら、音読の中で繰り返し英文を口にすることで正しい発音が定着します。
ただし、その際も自己流ではなく、音読テキストの音源を繰り返し聞き、自分の発音と聴き比べながら音読することが重要です。
まとめると、音読に発音そのものを向上させる効果はないが、事前に学んだ正しい発音を定着させる効果があるということです。
音読をしても文章の理解度は上がらない
音読をしたとしても、文章を深く理解できるようにはなりません。
例えば日本語でも理解できない難しい本を声に出したからと言って、理解できるようにはなりませんよね。
これと同じで、理解できない英文を声に出して読んだところで、英文が理解できるようにはなりません。
文章の理解度を上げるには、音読の前に一つ一つの文章の英単語と英文法を調べて全訳と照らし合わせる精読のほうが効果的でしょう。
ではなぜ、音読をすると意味理解の能力が向上すると言われるのでしょうか?
それは精読した英文を繰り返し聞く・読むことで、徐々に語彙・文法が内在化され、意味処理のスピードが高速化され、結果として次に新しい英文を読むときにも内在化された知識を活用できるようになるためです。
つまり発音のときと同じで、音読には英文の理解度そのものを上げる効果はないが、事前に精読していれば音読を通して、参照している知識が内在化され英文の処理能力が向上するということです。
理解していない英文を音読しても効果はない
第二言語習得理論によると、言語の習得に必要なのは「意味を理解した大量のインプット」です。
英文を精読せずに、意味も分からないまま音読をしても意味はありません。
音読のメインの狙いは英文処理能力の向上ですから、意味を理解した上で音読の回数を重ねる必要があります。
音を聞かずに取り組んでもリスニングは向上しない
音読と言うと、ただ文字で書かれた英文を読み上げることを想像するかもしれません。
しかし、音を聞かずに音読をすることは効果を半減させるどころか、間違った発音が定着したり、誤った意味の切れ目で英語を読むことに繋がります。
英語の音読では音をふんだんに使用することで発音・リスニング・リーディングの能力を大きく向上させることが出来ます。
英語の音読の効果はどれくらいで感じられる?
音読の効果がどれくらいで感じられるのか、というのに明確な数字は存在しません。
参考までに、私自身が毎日1.5時間音読を続けて結果を感じられたのは1ヶ月を過ぎた頃でした。
仮にそうだとすると、約45時間音読を正しく実践すれば明確な効果が顕現することが期待できます。
以下の記事では音読を1ヶ月続けて感じた効果について体験談を載せています。
さらに3ヶ月で感じた効果は以下の記事で解説しています。
効果的な英語音読の方法
英語の音読ではコツを押さえることで、正しい効果が得られます。
「効果がないと言われる理由」でも紹介した通り、取り組み方を間違えたり、漫然と取り組んだりするだけでは十分音読の効果を得られません。
以下が押さえるべきコツです。
- 1つの教材を繰り返す
- レベルに合った教材で行う
- 音声付きの教材で練習する
- 音源の発音をそっくり真似する
- 先に発音・英文法を勉強しておく
- 英文を理解・分析した上で音読する
- 定期的にチェックする(添削を受ける)
- 英文の意味をイメージしながら音読する
- トレーニングにバリエーションをもたせる
以下の記事でそれぞれの項目について具体的に説明しています。
英語音読におすすめの教材
英語の音読におすすめの教材は「英会話・ぜったい・音読」シリーズです。
以下3つのレベルで構成される、音読用のテキストです。
- 中学1・2年レベル
- 中3レベル
- 高1・2レベル
教科書から抜粋された英文のため、それぞれのレベルので必要な語彙・文法がバランスよく入っており非常におすすめです。
具体的な取り組み方や、レビューについては以下の記事に詳しいです。
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