英会話の救世主!「チャンク」の学習方法やおすすめ教材は?
英語を学習していると「チャンク」という言葉を耳にすることがあるかもしれません。
英語の「フレーズ」は聞いたことがあっても、チャンクとは何か?と言われると意外とあいまいであることが多いです。
しかし、チャンクは英会話学習における救世主となりうる非常に重要な概念です。
この記事では以下の疑問にお答えしていきます。
- チャンクってなに?
- 英会話におけるチャンクのメリットは?
- 英会話用のチャンク学習の方法、おすすめ教材は?
チャンクってなに?
よく「チャンクとフレーズって何が違うの?」と聞かれますので、その違いからチャンクとは何かを明らかにしていきましょう。
英語のチャンクとは一言でいうと「意味に基づくカタマリ」です。
チャンクは文法に関わらず、話し手が「意味の単位」として認識する言葉のまとまりを指します。チャンクは文の中で区切りやすい部分で、発音やリズム、意味的なまとまりによって決まります。
話し手や読み手によって、どこで区切るかが変わるため、一口にチャンクと言ってもその切り方はさまざまです。
例えば、The sun set quietly over the horizon.という文章は、短く切ればThe sun「太陽は」、set quietly「静かに沈む」、over the horizon「地平線の彼方に」という意味のカタマリにもなります。また、The sun set quietly「太陽は静かに沈む」、 over the horizon「地平線の彼方に」という意味のチャンクに切ることもできれば、The sun set quietly over the horizon.を一つのチャンクとして見ることもできます。
一方で英語のフレーズというのは「文法に基づくカタマリ」です。The sunは名詞句、set quietlyは動詞句、over the horizon前置詞句、といったように文法的な言葉のカタマリを指します。
以下の図はチャンクとフレーズの関係を表しています。
両者とも熟語やイディオムといった英語のカタマリを指しているのは同じですが、フレーズは文法的な役割に着目した概念、チャンクは意味に着目した概念であることが分かります。
実は私たちはすでに英語のチャンクをある程度知っています。
下の例は英語でよく使われるチャンクの一例です。
- How are you? – 調子はどうですか?
- I’m fine, thank you. – 元気です、ありがとう。
- Nice to meet you. – 初めまして。
- What’s your name? -名前は何ですか?
- My name is [Your Name]. – 私の名前は[名前]です。
- Where are you from? – 出身はどこですか?
- I’m from Japan. – 日本出身です。
- How much is this? – これはいくらですか?
- I don’t understand. – わかりません。
- Can you help me? – 手伝ってくれますか?
これらのチャンクの意味を考えるとき、How are you?は「調子はどうですか?」という1つの意味を持ったカタマリとして意味を取りますよね。
「Howは(どのようにして)という意味の疑問詞で、眼の前の相手に聞きたいからyouにして、be動詞は後ろがyouだからareにして…」というように単語レベルで考えることはないと思います。
このようにチャンクとは2語以上の意味で区切った英語のカタマリです。
英会話におけるチャンクのメリットは?
では、英語を意味のカタマリで捉えることで、英会話においてどんなメリットがあるのでしょうか?
具体的には以下の3つのメリットがあります。
- リスニングの処理能力が向上する
- スピーキングの流暢性が向上する
- スピーキングの正確性が向上する
リスニングの処理能力が向上する
英会話のリスニングにおいて、チャンクで捉えることによって音を聞き取ってから解釈するまでのスピードが向上します。
例えばHow are you?と言われたらその瞬間「調子はどうですか?」と聞かれていることがすぐに分かります。
このとき、「Howは(どのようにして)という意味の疑問詞で、眼の前の相手に聞きたいからyouにして、be動詞は後ろがyouだからareにして…」というように単語レベルで意味を考えていたら多くの時間がかかってしまうでしょう。
第二言語習得論の研究において、英会話の半分以上が定型表現で構成されていることが分かっており、多くの英語チャンクを知っていれば半分以上は即座にリスニングで意味が取れるということになります。
スピーキングの流暢性が向上する
英会話のスピーキングにおける悩みで多いのが、言葉がなかなか出てこないというものです。
英語で話したいことはあるんだけれども、英会話の中ですぐに文章にして口に出すことができないというのは多くの学習者がぶつかる壁です。
そこで役に立つのがチャンクの習得です。すでに述べた通り、英会話の半分以上が定型表現で構成されており、英単語を一つ一つ組み合わせているわけではないのです。
例えば、単語帳で日本語と英語をワンセットで覚えた単語は、英会話では単語は浮かんでも文章にして運用するのは難しいでしょう。
しかし、すでに紹介したような「Nice to meet you. – 初めまして。」「I’m from Japan. – 日本出身です。」といったチャンクは一度覚えてしまえばこのままの形でいいので、即座に口をついて出ることでしょう。
このようにチャンクはそのままの形、もしくは代名詞をyouからhimに変えたり、be動詞を主語に合わせて変えたりなど,ちょっとしたアレンジでそのままスピーキングに転用できるため、スピーキングの流暢性向上に繋がります。
スピーキングの正確性が向上する
チャンクは意味のカタマリということで、多くの人がそのままの形やちょっとしたアレンジのみで使うためスピーキングで使用する際には正確な表現で相手に意図が伝わりやすくなります。
例えば、「手を貸してください」といいたいとき、イチから自分で英文を作るとPlease lend me your hand.とするのが一見自然に見えます。
しかし、自然な表現は「Please give me a hand.」であり、give me a handというチャンクを知っていればlendを使うべきか、giveを使うべきかで間違えることはありません。
自分で英文を作ると「文法的にはおかしくはないけれど、単語をつなげた不自然な表現」など思わぬ間違いなどを犯してしまう可能性が高くなります。
しかし、チャンクは多くの人が自然に使うカタマリであるため、そのまま使うことでスピーキングにおける文法の正確性が向上します。
英会話のチャンク学習のポイント
英会話のためにチャンク学習をする際は3つ押さえておきたいポイントがあります。
- 短いチャンクから学習する
- 文法学習をおろそかにしない
- 英会話でチャンクを使う
短いチャンクから学習する
チャンクは短いものなら2語、長いものなら10語以上のものもあります。
また、チャンクは話者の意図やレベルによって短く切ることもあれば、一息に喋ることもあります。
初心者のうちは、一度に捉えられるチャンクは長くないため、まずは短いチャンクから覚えるようにしましょう。
例えば以下のようなチャンクはあいさつや簡単な応答で使う、短めのチャンクです。
- What’s up?
どうしたの?/元気? - Sounds good!
いいね!/良さそう! - I’m in.
参加するよ!/やるよ! - Let me know.
教えてね。/知らせてね。 - Take your time.
ゆっくりでいいよ。/急がなくていいよ。 - I got it.
わかった。/任せて。 - Hang on.
ちょっと待って。 - My bad.
ごめん。/僕のミスだ。 - No worries.
気にしないで。/大丈夫だよ。 - Here you go.
はい、どうぞ。/どうぞ、お使いください。
英語力が付いてくると、自然と一度に意味を捉えられる範囲が伸びていくため、徐々に長いチャンクも身につけていくとよいでしょう。
以下のチャンクはビジネスの現場でも使えそうな少し長めのチャンクになります。こういったチャンクもゆくゆくは身につけていけると良いですね。
- I’m not sure if that’s a good idea.
それが良いアイデアかどうかはわからないな。 - I’ll get back to you on that.
それについては後で返事するね。 - Thank you for letting me know.
教えてくれてありがとう。 - I’ll keep you posted.
随時知らせるね。/進捗を報告するね。 - I’d appreciate it if you could help me with this.
これを手伝ってもらえると助かります。 - It’s up to you to decide.
決めるのはあなた次第だよ。 - Let me know if there’s anything I can do.
何かできることがあったら教えてね。 - Do you happen to know where it is?
どこにあるか知ってたりする? - I didn’t mean to bother you.
邪魔するつもりはなかったんだ。 - I’d be happy to help you with that.
それを手伝えると嬉しいよ。
文法学習をおろそかにしない
チャンクが意味のカタマリを表すというと「チャンクを丸覚えすれば英文法を勉強する必要はないのでは?」と思うかもしれません。
しかし、チャンクに加えて英文法の学習は必須です。理由は2つあります。
1つ目は、文法を理解したうえでチャンクを学習したほうが記憶に残りやすいからです。
かんたんなチャンクであれば文法の必要性は感じないかもしれませんが、英語のレベルが上ってくると丸暗記だと対処しきれないことが出てきます。
例えばDo you happen to know where it is?という英文では、happen to doというチャンクが含まれていますが、to不定詞の後ろには動詞の原形が来るという文法を知っていれば、happen to knowという形を取るのは当たり前のこととして記憶しやすくなります。
他にもto不定詞を取るチャンク表現はたくさんありますから、こういったチャンクを文法的に理解したうえで学習することで効率よく覚えていけるでしょう。
2つ目は、文法を学習することでチャンクの応用ができるからです。
例えば、Do you happen to know where it is?ではyouをheに変えればDoes he〜となり、場所でなく時間を尋ねるならwhereをwhenに変えることで応用した表現できます。
これらの応用は代名詞の変化や三単現、疑問詞の入れ替えなどの文法をもとにしていますが、こういった「ルール」は経験的に覚えていくよりも、集中的に学んだ方が効率が良いです。
チャンク×文法で意味のカタマリを文法操作で幅を広げることで、スピーキング能力が効率的に向上します。
英会話でチャンクを使う
チャンクは書籍やYouTubeなどで学ぶことができますが、学んで終わりではなく実際に英会話で聞き・話す必要があります。
特にチャンクをインプットするだけでは、スピーキングのときに思うように口をついで出てくるようにはなりません。
第二言語習得論では、インプット8割、アウトプット2割が効率的な英語学習の時間配分とされています。
ですから、チャンクのインプットに加えてチャンクを使ってスピーキングや英会話に取り組む時間を全体の2割ほど確保するのがおすすめです。
例えば、1週間に10時間学習する場合はチャンクの学習を8時間、英会話やスピーキングの時間を2時間程度確保することになります。
オンライン英会話であれば、1回のレッスンが25分程度なので週に5回程度取り組むのがいいでしょう。
ただし、英会話は聞いているだけの時間もあるので、凝縮してスピーキングに特化した学習を行いたい場合は一人でもできるスピーキングのトレーニング中にチャンクの使用を意識するといいでしょう。
一人でもできるスピーキングのトレーニングについては以下の記事で詳しく紹介しています。
英会話のためのチャンクの学習方法、おすすめ教材は?
ここではチャンクを使って英会話ができるようになる、具体的な学習方法を紹介します。
まずは全体の流れを4つのSTEPに分けて把握しましょう。
- 語数が少ないかんたんなチャンクから覚えていく
- 書籍、YouTube、Webサイト、アプリなど自分に合った媒体から選ぶ
- 必ず音声とセットで学習する
- 読むだけ、聞くだけにならないよう声に出す
- 英会話やスピーキングなどアウトプットで口に出す
- STEP2のやり方で定期的に復習する
STEP1:レベルにあったチャンク教材を選ぶ
STEP1では、自分に合ったチャンク教材を選びます。チャンク教材を選ぶ際の基準は2つです。
1つ目の基準は自分のレベルです。
チャンク表現をあまり知らない、英語の能力に自信がないという場合は2〜5語程度の短めのチャンクが収録された教材を選ぶといいでしょう。
特にスピーキングで使うためのチャンク表現は学校でもあまり習っていないケースが多いので、学校英語をきちんとやっていた方でもはじめは簡単すぎるくらいの教材からスタートするのがおすすめです。
2つ目の基準は自分に合った媒体です。
最近は書籍、kindle、YouTube、アプリなどさまざまな媒体で英語のチャンク学習が可能になってきています。
例えば、紙のほうが覚えやすいという場合は書籍がおすすめですし、動画で音声とセットで確認したい場合はYouTubeがいいでしょう。
おすすめの教材をいくつか紹介しておきますね。
まず書籍では、以下の3冊がおすすめです。いずれも音声ダウンロードとkindle版に対応しています。
「チャンクで英単語 Basic」は英単語をよく使うコロケーションと一緒に覚えられる単語帳の位置づけの書籍です。
Basic以外にも、Standard、Advancedとレベルが分かれているのでこちらを制覇していくのもいいでしょう。
「世界の春日プロジェクト チャンクで学ぶ英会話」お笑い芸人のオードリー春日さんが、NHKの同名番組で学習する内容を書籍化したものです。
イラストも豊富で、NHKの番組を観ながら一緒に進めていくのも楽しいでしょう。
「シンプルなのに圧倒的に「伝わる」! ネイティブが最初に覚える英会話フレーズ300 」は、後で紹介するYouTubeチャンネルで人気の動画が書籍化されたものです。
YouTubeと合わせて学習することで、書籍とYouTubeのいいとこ取りで学習が進められます。
次にYouTubeチャンネルでは以下の2チャンネルがおすすめです。
「英語聞き流し | Sakura English」は以下のような長尺動画で様々なレベル感のチャンクを学習することができるチャンネルです。
一つの動画で300のフレーズなど有料級の情報を無料で視聴できるのは嬉しいですね。
「This is 英会話」はリアルな英会話のシーン動画や、ネイティブスピーカーによる英語のフレーズ紹介など、リアルにこだわったチャンネルです。
以下の動画は機械音声ではなく、人間が発音しているので自然な印象を受けます。
STEP2:チャンクの発音と意味を確認して復唱する
お好きなチャンク教材を選んだら、いよいよ学習開始です。
まずチャンクを学習するときは、必ず発音もセットで学習しましょう。
発音をしっかり聞くことで、英会話で相手がチャンク表現を使ったときに瞬時に聞き取り、認識することができます。
「自分が使えればいい」だけではないので、必ず音声を聞くようにしましょう。
次に、ただチャンク教材を聞くだけ、見るだけの学習は避け、必ず自分でも声に出して復唱するようにしましょう。
英会話は口頭のやり取りであり、聞く・話す活動になりますから、音声を聞いたら自分でも発音することが大切です。
さらに、自分でも発音することで脳が活性化し、記憶にも定着しやすくなります。
STEP3:チャンクをアウトプットする
チャンク学習のポイントでも挙げましたが、チャンクを使ってアウトプットする時間を確保しましょう。
本で読んだ、YouTubeで聞いた、としても実際に英会話の中で使えるかどうかはまた別の問題です。
学習時間の2割程度は英会話はスピーキングといったアウトプット活動に割くことで、英会話の中で使えるチャンク表現が徐々に増えていきます。
英会話は相手とのやりとりになり、狙ったチャンクを使う場面が来るかどうか分からないので、自分一人でできるスピーキングトレーニングからスタートして、その日に使いたいチャンク表現をメモして実際に使ってみるのもおすすめです。
一人でできるスピーキングトレーニングは以下の記事で詳しく解説しています。
STEP4:定期的に復習する
チャンク学習は英単語や英文法の学習と同じように何度も触れることで徐々に長期記憶に定着していきます。
暗記に近いものは「忘れた頃に復習する」のが原則ですから、短いスパンで復習せずにどんどん前に進み、忘れた頃に復習するのがおすすめです。
例えば、300のチャンク表現が収録されている教材であれば、1日4〜50程度のチャンクをインプットして、1週間で回していく、といったペース感です。
ボリュームのある教材だと、100ずつに区切って最初の100を完璧に覚えてから、次の100に進む、というやり方がありますが、これは復習の頻度が高くなりすぎるのでおすすめしません。
復習の頻度はなるべく空けたほうがいいです。
英会話のチャンク学習についてのまとめ
この記事では以下の疑問について解説しました。
- チャンクってなに?
- 英会話におけるチャンクのメリットは?
- 英会話用のチャンク学習の方法、おすすめ教材は?
英語のチャンクとは一言でいうと「意味に基づくカタマリ」で話者によってどこで区切るかは違うということでした。
具体的なチャンクは以下のようなものです。
- How are you? – 調子はどうですか?
- I’m fine, thank you. – 元気です、ありがとう。
- Nice to meet you. – 初めまして。
英会話におけるチャンクのメリットは以下の3つです。
- リスニングの処理能力が向上する
- スピーキングの流暢性が向上する
- スピーキングの正確性が向上する
英会話のためのチャンク学習方法の流れは以下の4ステップです。
- 語数が少ないかんたんなチャンクから覚えていく
- 書籍、YouTube、Webサイト、アプリなど自分に合った媒体から選ぶ
- 必ず音声とセットで学習する
- 読むだけ、聞くだけにならないよう声に出す
- 英会話やスピーキングなどアウトプットで口に出す
- STEP2のやり方で定期的に復習する
チャンク学習におすすめの教材は以下の5つです。
書籍 or kindle
YouTube
学習継続に不安がある方は英語コーチングがおすすめ
一人で英語学習を継続するのに不安がある方は英語コーチングがおすすめです。
英語コーチングとは、英語学習のプロである英語コーチが専属であなたの英語学習を徹底的にサポートするサービスです。
具体的には
- 週次の面談
- 毎日の学習進捗チェック
- 学習計画の作成
- 発音・英作文の添削
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といったサポートを提供することで、英会話習得までの時間を1/2~1/3にまで短縮することができます。
日常英会話には860時間、ビジネス英会話の習得には2800時間の学習時間が必要とされています。
しかし、英語コーチングを利用することで日常英会話の習得までを280時間、ビジネス英会話の習得までを900時間程度にまで圧縮することができます。
英会話教室やオンライン英会話はレッスン時間にのみ英会話の機会を提供しますが、英語コーチングは面談以外の時間にも毎日学習進捗の確認や課題の添削などのサポートを行っている点が最大の違いです。
学習の継続と効率的な学習の2つに重点を置くことで、留学前の英会話習得をサポートしてくれます。
英語コーチングについて、以下の記事で詳しく解説しています。
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