【英語コーチが本気の教材レビュー】「究極の英語学習法 K/Hシステム 基本編」
この記事では「究極の英語学習法 K/Hシステム 基本編」の教材レビューを行っていきます。
リスニング力を向上させる効果的なトレーニングの1つとして知られるシャドーイング。
多くの方が耳にしたことはあっても、具体的にどんなステップで取り組むのか、あやふやなケースが多いのではないでしょうか??
今回はしっかりとシャドーイングの理論と実践方法を学習したい方におすすめの参考書を紹介します。
「究極の英語学習法 K/Hシステム 基本編」はどんな教材??
書籍の基本情報は以下のようになります。
タイトル | 価格(税抜) | 著者 | 出版社 | 発行年 |
---|---|---|---|---|
究極の英語学習法 K/Hシステム 基本編 | 2,500円 | 国井信一 / 橋本敬子 | アルク | 2019 |
シャドーイングのやり方を、アカデミックな理論と共に学習できる参考書です。
音源自体は計7分(4分のもの1本と3分のもの1本)と短いですが、1つの英文を完璧にシャドーイングできるようになるまで徹底的に繰り返すのが本書の特徴です。
かなり細かいところまで数字で管理をしていくので、あまり一般受けせずamazonのレビュー数も多くはありません。
しかし英語を指導する立場の方たちが、おすすめしているケースを散見し、隠れた名著といったところです。
「究極の英語学習法 K/Hシステム 基本編」はどんな人におすすめ?
- TOEIC800以上を保有している
- シャドーイングのやり方を体系立てて身につけたい
- 英語会議を聞き取れるようになりたい
この書籍はかなりの長さの英文をナチュラルな速さで聞き取る必要があるので、ある程度の英語力を必要とします。
目安としてTOEIC800程度を取得した後、取り組むと得られるものも多いでしょう。
また前述の通り、シャドーイングの実践方法を理論とともにかなりのページ数を割いて事細かに記しているので、シャドーイングをきちんと理屈から理解したい方にはうってつけの書籍です。
詳しくは後述しますが、収録されている音源は1つ4分と長く、また普通に話しているところを一発撮りしたような録音方法が採用されているため、英語の会議など実務で用いられる英語にかなり近いです。
「究極の英語学習法 K/Hシステム 基本編」の優れている点
- 効果的なシャドーイングの実践方法がくわしく分かる
- 音と意味の2つに分けてトレーニングするから、効果を実感しやすい
- 音源がリアルで、長いから実務で活かしやすい力がつく
- リスニングのスクリプトに音・意味に関するヒントがたくさんある
効果的なシャドーイングの実践方法がくわしく分かる
この書籍では、同時通訳の訓練メソッドを取り入れたシャドーイングの理論と具体的な学習方法が分かります。
シャドーイングの取り組み方を全体像から部分へと落とし込んだ構成となっており、各ステップで「何をしたらよいか」が詳細に書かれています。
シャドーイングを推奨していたり、そのやり方を解説している本はたくさんありますが、ここまで詳しく記載がある本は珍しいです。
音と意味の2つに分けてトレーニングするから、効果を実感しやすい
リスニングの際の脳の働きは、①音声知覚②意味理解の2ステップに分かれています。
①音声知覚は、音をしっかり取れているかという観点になります。
②意味理解は、知覚した音声から意味をしっかり汲み取れているかという観点になります。
例えば、What do you do?と聞かれて
「なんて言ったんだろう??」
という場合は音声知覚で失敗していることになるし、
「What do you do?ってどういう意味だろう?」
と言う場合は音声知覚には成功しているものの、意味理解で失敗していることになります。
こちらの書籍では「音」と「意味」それぞれに集中したシャドーイングを行い、最後に両方を統合した形で仕上げのシャドーイングを行います。
そのため、今までリスニングのトレーニング中に
「なんとなく聞いただけで終わっていた」
「音に集中すると意味が頭に残らないし、意味を取ろうとすると音に追いつかない」
といったことを感じた方は、成果を感じやすいはずです。
音源がリアルで長いから、実務で活かしやすい力がつく
シャドーイングの題材となる音声は4分のもの一本と、3分のもの一本の計二本7分になります。
TOEICの英文と比べるとかなり長く、内容も以下のようにかなりリアルな場面を想定しています。
- 音源がクリア過ぎない
- 言い間違いや言い直しが含まれている
- 内容がビジネス寄りで、理路整然としすぎていない
まず、多くの教材と違って音声がクリアすぎず少しノイズのような音や聞こえづらい箇所が存在しています。
悪く言えば、録音環境が心配になるのですが、良く言えば実際に自分の耳で直接その場面に出くわしたような感覚でトレーニングができます。
またuhといった単語の言い直しなどもカットされることなく、残っているため非常にリアルな音声になっています。
内容は2本とも「アメリカ人と日本人の労働観の違い」を扱っています。
内容も用意された原稿を読んでいる感じではなく、ある程度その場で思いつきで喋っている雰囲気です。
もちろん実際のビジネス現場でも原稿を読むわけではありませんから、実務で聞く英語とかなり近いものになっているはずです。
リスニングのスクリプトに音・意味に関するヒントがたくさんある
リスニングの音源を文字に起こしたものをスクリプトといいますが、この書籍のスクリプトには
- リズム・アクセントを図式したマークが記載されている
- 通常の和訳に加え、文法事項や単語の用法などが詳述されている
という特徴があります。
特に英文を読むリズムが波形で表されているため、強弱を可視化した状態で確かめることが出来るのがいいですね。
「究極の英語学習法 K/Hシステム 基本編」の残念な点
- トレーニングの理論が複雑すぎる
- TOEIC800以上でないとトレーニングの成果が十分に出ない
- TOEICなどの資格試験ですぐには結果が出にくい
トレーニングの理論が複雑すぎる
この本はK/Hシステムという一連の英語学習プログラムの中の「基本編」という位置づけです。
かなりアカデミックで骨太な理論背景にページが割かれているため
「とにかくやり方だけ分かればいい!」
と考える学習者にとっては、少し複雑に感じられるかもしれません。
また、各ステップで録音が必要だったり、トレーニング方法が分化したりと途中で「もういいや」と挫折しやすい作りになっていると感じられる部分があります。
TOEIC800以上でないとトレーニングの成果が十分に出ない
TOEIC800を満たさない場合、この書籍でのトレーニングは少し厳しいかもしれません。
対象レベルとして「英検2級 / TOEIC600以上」とありますが、少し時期尚早な感じがします。
音源の長さが3、4分と長く、内容・スピードともにそこそこのレベル感であるため、もう少し短い音源や平易な教材ベースの音源で練習を積んでから活用したほうが効率的に実力を伸ばせると思います。
TOEICなどの資格試験ですぐには結果が出にくい
TOEICの試験では2分を超えるような英文は登場しませんし、言い間違いやノイズの入った音声は流れません。
ですので、TOEIC試験などで即効性を求めているのなら、この書籍はベストではないと感じます。
どちらかと言うと実務で必要性がある方や、シャドーイングの本質的なやり方を腰を据えて体得したいと考えている方向けの書籍だと思います。
コメント