【科学的に解説】リスニングの聞き流しは効果なし!
英語学習をしていると、大量の英語音声を聞き流すトレーニングや教材が紹介されている光景を目にします。
一部の達人学習者が進める一方で、「聞き流しは効果がない」と主張する方もいて、初学の方からすると「結局聞き流しは効果があるのか?ないのか?」という点をはっきりしてほしいのではないでしょうか?
この記事では、現役の英語コーチとして活動する筆者が第二言語習得理論をもとに以下の疑問にお答えしていきます。
・聞き流しって何?
・聞き流しの効果がないと言える理由は?
・聞き流しで効果が得られる状況はある?
聞き流しについて正しい理解をしましょう!
聞き流しって何?
英語学習における「聞き流し」とは、聞こえてくる音に集中せずに大量の英語音声を耳に入れる学習法です。
例えば、家で英語のニュースを特に聞き取ろうとせずに聞いたり、何か別のことをしながら英語のラジオを聞いたりする状況が聞き流しだと言えます。
似たような英語学習方法として「多聴」があります。
多聴と聞き流しの違いは「内容に意識を向け、理解出来ているか」です。
同じように英語の音声を聞いていても、多聴のときには自分のリスニング力で理解できるレベルの音声を意識的に聞き取ろうとしているのに対して、聞き流しでは流れてくる音声のレベルに関わらず、内容を理解しようとせずに「耳に入ってくる」という意識の違いがあります。
聞き流しの効果がないと言える理由は?
結論から言うと、英語の聞き流しは効果がありません。
理由を説明するのに必要な前提知識を説明します。
外部からインプットした情報を処理して、長期記憶に保存するまでの脳内処理を図式化したのが以下です。
外部からインプットされた情報はまず「感覚記憶」に0〜2秒という極めて短い期間、保存されます。
その後、感覚記憶に保存されたインプット情報は「ワーキングメモリ」へと遷移します。
ワーキングメモリとは、例えるなら作業机のようなもので、この段階で学習者は聞こえてきた音声を語彙・文法など自分の知識データベースに基づいて意味処理を行います。
意味処理を経て、正しく整理された知識は「長期記憶」として脳内に保存されます。
インプットされた音声は長い旅路を経て、長期記憶に到達してはじめて自らの知識となります。
感覚記憶からワーキングメモリに、ワーキングメモリからインプット情報が遷移する際に、人間の脳は「選択的注意」が働きます。
選択的注意とは、多様な外部情報から重要な情報のみを選択し、それに注意を向けるという脳の働きです。
聞き流しに効果がないと言える理由は、聞き流しのときには流れてくる音声に対して十分な注意が向けられていないことが挙げられます。
聞き流しているときの脳内処理の過程を図式化したのが以下です。
聞き流しの音声が耳に入った後、感覚記憶からワーキングメモリに遷移する際に選択注意が働いていない情報はワーキングメモリに遷移しません。
前述の通り、インプットされた情報はワーキングメモリではじめて音声・意味的な処理をされます。
そのため、選択的注意が働かずワーキングメモリに到達していない聞き流し音声は「意味のない雑音」として学習効果をもたらすことはありません。
「ながら聞き」で効果が得られる状況はある?
聞き流しとは違いますが、「ながら聞き」は取り組み方によっては普通にリスニングのトレーニングに取り組むよりも高い効果が得られます。
「ながら聞き」は、リスニングとそれ以外の行動を同時に行う行為を指します。
聞き流しとの違いは、「リスニングに意識を意識を向けている」という点です。
ながら聞きは、軽度の運動と組み合わせるとリスニングの学習効果が通常よりも高まることが分かっています。
例えば、ウォーキングやジョギングをしながらリスニングに意識を向けるトレーニングが効果的だと言えます。
「ながら聞き」が効率的になるのは、リスニングに十分意識が向けられている場合に限ります。
強度の高い運動や、本を読みながらのリスニングでは、音声に十分意識を向けられないので逆効果となります。
まとめ
この記事では以下の疑問についてお答えしました。
・聞き流しって何?
・聞き流しの効果がないと言える理由は?
・聞き流しで効果が得られる状況はある?
1つ目の「聞き流しって何?」に関しての回答です。
英語学習における「聞き流し」とは、聞こえてくる音に集中せずに大量の英語音声を耳に入れる学習法です。
2つ目の「聞き流しの効果がないと言える理由は?」については以下のとおりです。
聞き流しの音声には選択的注意が働かないため、ワーキングメモリに到達せず、そもそも雑音と同じであるため、でした。
3つ目の「聞き流しで効果が得られる状況はある?」については以下を挙げました。
聞き流しで効果が得られる状況はある?
- リスニング×運動で組み合わせると効果大
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